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キーマンに聞く

AIで成約率・単価アップ実現【NOVIC 代表取締役 金田 昌彦氏×イマジエイト アライアンス担当 宗像 良氏×NOVIC カスタマーリレーション部 部長代理 野村 佳子氏】

AIで成約率・単価アップ実現【NOVIC 代表取締役 金田 昌彦氏×イマジエイト アライアンス担当 宗像 良氏×NOVIC カスタマーリレーション部 部長代理 野村 佳子氏】

ブライダルのAI活用は、業務効率化はもちろんのこと売上アップにも繋がる。それを体現しているのが、カジュアルWプロデュースのNOVIC(東京都渋谷区)だ。同社の徹底したシステム化、オンラインプランナーの仕組みについてはこれまでも紹介してきたが、今回はAI活用の実践例をピックアップ。金田昌彦社長、カスタマーリレーション部部長代理の野村佳子氏、AIの仕組みをサポートしているイマジエイト(東京都渋谷区)宗像良氏が未来を語った。

各業界向けに定着支援
――NOVICはオンラインプランナーを活用していくシステム化を推進しながら、並行してAIも積極的に対応してきました。今後はブライダル業界全体へ、いかに共有していくかを考えている中、今回はNOVICのAIサポートをしているイマジエイトの宗像さんも同席してもらい、現在の取り組みなどを探っていきたいと思っています。
金田「宗像さんは、様々な業種の企業・組織に向け、AIをどのように活用していくかナレッジを落とし込むビジネスを展開しています。実は10年ほど前に当社にも一時所属してもらっていて、システム構築の業務を担当してもらっていました。そうした経緯もあり、ウエディングの仕事に関する様々な内容も把握した上で、AI運用のサポートをしてもらっています。また当社の野村は、現在カスタマーデスクの事業責任者を務めていて、今どんな風に取り入れているかというリアルな話も出来ますので、そこを多くの人に共有してもらえれば。」
――宗像さんはもともと、AI開発などの専門家といったキャリアだったのですか。
宗像「現在私は、AIの法人利用を促進しようという動きをしています。ChatGPTなどAIが進化している状況ながら、まだまだ組織で使うというよりも個人個人で使っている企業が多いのも事実。そこでもう一つステップを進めませんかと、組織としていかに生成AIを活かしていくかの方法などを提案しています。そのために、どうやって使ったらいいのかというアイデア出しの方法、運用ルール、定着支援などコンサルタントのような動きです。私自身はもともとAIの研究者やシステム会社出身というわけではなく、マーケットリサーチの業界にいました。各クライアントの様々な業界における膨大なデータを加工し分析するといった仕事をしながら、15年ほど前にたまたまAIの研究室と話をする機会がありました。その時に思ったのは、まず自分の業務に使うと将来的には物凄く楽になるだろうなということで、そこから興味を持ち現在はAIを各企業に提案する仕事に移行しています。AI開発会社と組みながら、利用を促進するためにスタッフの意識醸成やその方法を、各業界向けに翻訳しながら提案しているというイメージです。」
――NOVICでのAI活用の取組みはいかがですか。
金田「当社では以前からAIに取り組んできましたが、最初の段階を振り返ってみるとやはり個人で使っているというレベルでした。生成AIのChatGPTなどをまずはそれぞれ好きなように使ってみて、そこで得た個々のナレッジを共有してきたわけです。ナレッジ共有を目的に、以前からAIを活用したベストプラクティス賞というコンテストも開催しています。要はAIを活用してどれだけ顧客を感動させられたのか、業務効率を出来たかなどをプレゼンするものです。毎年3 月に開催していて、優秀なアイデアにはインセンティブも付与しているほか、自社の運用に役立てています。」
――カスタマーデスクでもフル活用しているようですね。
野村「私の所属するカスタマーリレーション部は、新郎新婦からの問合せを一元管理しているほか、プランナーのサポート業務も担っています。例えば新郎新婦からのメールや問合せに対し、その人に合わせてどのように伝えれば伝わりやすいのかといった、経験の必要な項目も出てきます。新郎新婦からのオーダーに対して断らなければならない場合は特に繊細で、返信にはニュアンスなども考慮しなければなりません。それまでも専用のシステムを使って対応していましたが、現在はAIに質問を投げかければそのまま回答として文字起こしされて出てきます。AIのような機械的な表現でないかを確認し、回答通りにメール返信として使えることも増えています。」
新人でも対応できるQ&A
――問合せ対応は、AIを活用することでそのクオリティも高まります。
野村「それ以外には、様々なQ&AをAI内に溜め込んでいるため、カスタマーデスクのスタッフは、新人であってもいちいち調べなくてもすぐに回答できるようになっています。当社の場合、複数のパーティープランを展開しているので、それぞれ準備に関する締切日も異なる。慣れないスタッフであれば、複数のプランに混乱して分からなくなってしまうこともありましたが、今ではAIに『○○プランを選択している人の○○の締切日は?』と聞けば、すぐに正確な答えを確認できます。システムで対応していた時との違いについては、こうした質問もキチンとキーワードを合わせて検索しないと、望んでいる回答が出てきませんでした。AIであれば前後の文脈、背景までも読み取ってくれるため、多少曖昧な質問であっても欲しい回答を得られ、探す手間・時間は本当に解消できています。」
金田「カスタマーデスクの対応がAIを使って均質化されれば、その分会社にとって重要な新郎新婦のCSも高まっていきます。一方でプランナーについては、新郎新婦のコミュニケーションタイプや顧客情報を入れれば、その人に合わせた接客方法をアドバイスする回答が出るようになっています。当社では打合せ時の単価アップをプラン毎に目標設定していますし、それを達成するためには新郎新婦に喜んでもらえるような提案は必須。それぞれの新郎新婦の好みなどに合わせてどんな演出を提案したらいいのかを考える上で、これまではプランナー個々人で頭を悩ませながら、時には先輩に相談をして決定していました。現在はまずAIに壁打ちすると、即座にいくつかの模範回答が出てきます。その回答は、これまでのデータの蓄積から弾き出されたものだからこそより正確性も増し、今では上司に相談せずにそのまま提案すれば、結果として単価アップを実現できています。何を提案すればいいのかを考えるAIの精度も、進めていくうちにどんどん向上しています。」
――コミュニケーションタイプの判別に必要なデータは、アンケート結果に基づいているのでしょうか。
金田「アンケートの回答もありますし、それ以外にも2 人の雰囲気や様子などをデータとしてAIに入れ込んでいます。現在当社の接客はオンライン中心になっているものの、対面接客の場合にはどんな洋服を着ているのかといったこともデータとして入力。そのデータと、回答結果になる豊富な進行、演出などの提案が紐づいています。顧客傾向を探っていくという機能はプランナーも積極的に活用して__いて、それこそ新人プランナーであれば経験不足を補うまでになっています。また本来あってはいけないものの、仮にコンプレが発生した場合、どのような対応をしたらいいかの事前想定にも活用。最初にコンプレの内容をAIに壁打ちして、その後マネジメントに相談するという流れです。10パターン程度AIから得られる回答のうち、必ずどれか一つは当てはまるものは出てきますから。他にはマーケティング分野で、SNSでどんなコンテンツを発信するかといったことを、AIに壁打ちしたうえで決めていきます。」
――社内マネジメント面でも活用を進めています。
金田「人事制度など様々な社内ルールに関して、社内AIに全て読み込ませているため、例えばチーフからGMに昇格すると年収はいくら上がるのかといったことも、誰もがすぐに調べられます。契約書をチェックする際、これまでは法務担当で細かくチェックしていましたが、現在はAIに入れれば誤字脱字や法的におかしい部分なども一瞬で出てきます。当社では地方をカバーするためにFCの仕組みも展開していて、そのサポート役にSVと称した責任者を置いています。各地のフランチャイジーから様々な問合せも舞い込んできますが、今はAIを使い社内チャットボットのような形にしていて、不明点やイレギュラー対応もAIに聞いて対応できるようになっています。」

 

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、3月11日号)