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:連載104:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW] 人気の「果実酒ラウンド」演出には注意を! 【株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏】

:連載104:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW] 人気の「果実酒ラウンド」演出には注意を! 【株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏】

 いつもご愛読ありがとうございます。猛烈に暑い日が続いていますが、そんな時期こそ披露宴で人気の演出が、フルーツ等にお酒を注いでオリジナルの飲み物を作る『果実酒ラウンド』です。
 ただこの演出、実は法的な注意が必要なのはご存知でしょうか。今回のコラムは『果実酒ラウンド』についての法的な考え方をQ&A形式で解説します。

Q 新郎新婦から「披露宴で果実酒ラウンドの演出をしたい」と依頼を受けました。ただ、免許を持たずにお酒を造るのは違法だったはず…。『果実酒ラウンド』は問題ないのでしょうか?
A そうした気づきは素晴らしいですね!
 お察しの通り、免許を持たない者が「お酒」を自ら造ることは酒税法において禁止されています。そしてそれは日本酒やワイン等の「お酒」そのものを自分で作るのみならず、「お酒」と「フルーツ等の別のもの」を混ぜることも「お酒を造ったこととみなす」という規定があるのです。↓↓
酒税法第43条(みなし製造)第1 項酒類に水以外の物品(当該酒類と同一の品目の酒類を除く。)を混和した場合において、混和後のものが酒類であるときは、新たに酒類を製造したものとみなす。(後略)

Q 厳しいですね!では、やはりこの演出はお断りしないとダメでしょうか。
A いえいえ、そうではありません。この条項には例外があります。↓↓
酒税法第43条(みなし製造)第10項前各項の規定は、消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない。

 つまり、「飲む直前にまぜる場合はOKになる場合があるよ」という例外規定があるのです。そして具体的にどんな場合がOKなのかというと、酒税法施行令に下記のような規定があります。↓↓
酒税法施行令第50条第13項(OKな場合としては)酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場において飲用に供することを業とする者がその営業場において消費者の求めに応じ、又は酒類の消費者が自ら消費するため、当該混和をするときとする。
 
 ここでOKとされている典型例としては、バーのバーテンダーが利用客から依頼を受けてカクテルを作って提供するような場合です。
 これを披露宴の場面に当てはめて解釈すると、
① 結婚式場を運営し飲食を提供している事業者が
② その結婚式場内において③ お客様(新郎新婦または参列者)の求めに応じて
④ その場でお客様ご自身が飲むことを目的に
⑤ お酒とフルーツ等の他のものを混ぜる行為
については「みなし製造」に該当せず、酒造についての免許が無くても行うことができるという結論になります。

Q まさに想定した演出内容の通りです!
A 特に注意すべきは④で、もし「その場で飲む」のではなく「持ち帰り」を想定した演出だと「みなし製造」に該当してしまい、違法となるリスクが高まりますので注意が必要です。

Q この内容で新郎新婦と相談しますが、もし「これはできるか」「あれはどうか」と細かいリクエストがあった場合はどう判断すべきですか?
A 「お酒」に関する免許は税務署が窓口となりますので、最終的に演出内容を確定する前に実施する施設を管轄する税務署に相談してみると安心です。また、ブライトでも酒造や酒販等「お酒」の許認可についても実績がありますので、いつでもお気軽にご相談ください。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、8月1・11日合併号)