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キーマンに聞く

:連載101:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW]『「フォトウエディング」で思わずはまる法律の落とし穴5選』【株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏】

:連載101:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW]『「フォトウエディング」で思わずはまる法律の落とし穴5選』【株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏】

風薫る5 月、屋外でのフォトウエディングには「もってこいの季節」がやってきました。そこで今回のコラムでは、事業者がフォトウエディングを展開する上で、抵触しがちな法律上の規制について、フォトグラファーに撮影を「依頼する立場(ホテル・式場等)」の視点から整理します。まさかの落とし穴にはまることのないよう、参考にしてくださいね!

注意① 著作権法

フォトウエディング(以下「前撮り」等も含みます)で撮影された写真には、同法に基づき「著作権」が発生し、原則としてこの権利は撮影したフォトグラファー本人に帰属します。撮影したフォトグラファーが撮影会社の従業員であるような場合で、著作権法第15条第1 項(職務著作)規定の要件を満たす場合には、撮影会社に帰属することもあります。このことは有償で撮影を依頼した場合でも同様ですから、依頼主が「著作権」を気にせず納品された写真データを自由に活用したいのであれば、予め依頼先との間で「撮影データの引き渡しと同時に著作権も譲渡する」等と、契約しておく必要があります。また、「著作権」とは別に写真の加工を禁じることなどができる「著作者人格権」という権利も発生。撮影した本人に帰属するため、契約時には「著作権」と並んで「著作者人格権」の取扱いについても、合意しておく必要があります。

注意② 肖像権

写真の被写体となった本人の同意を得ずに無断で撮影、公表すると、「肖像権」の侵害になり得ます。こちらもトラブルを回避するためには、予め「どんな利用をするのか」、「有効期間をいつまでとするか」等を定めた書面を用いて、本人から明確に同意を得ておくことをお勧めします。なお小さなお子様を撮影する場合には、親御さんから同意を得るようにしてください。

注意③ 美容師法

美容師法第7 条で化粧等の美容行為ができるのは「美容所」内と規定されており、屋外等それ以外の場所での施術は違法となります(婚礼等の儀式に参列する「直前の施術」のみ例外的に場所の制約がなくなります)。同法に抵触しない形でフォトウエディングサービスを企画する上では、まず化粧等を「美容所」にて行い、その後に屋外へ移動して撮影する、という流れを確保しておく必要があります。注意④ 道路運送法道路交通法では人を「有償」で運送するには国土交通大臣の許可が必要と規定しており、許可を得ていない事業者(99%がこれに該当します!)が撮影場所まで「有償」でお客様を「送迎」すると、同法の規制に抵触してしまいます。

もしウエディングサービスの一部に「送迎」を入れてしまうと、それは「有償」で提供されることになってしまいますので、どうしても送迎が必要な場合は「無償サービスであること」を明記しておく必要があります。撮影場所まで事業者に送迎されても、お客様自身が自家用車で移動しても料金は一緒、という形にできればクリアです。

注意⑤ 旅行業法

旅行業法では、旅行業登録をしていない事業者が「報酬を得て」運送や宿泊のサービスを手配することを禁じており、無登録の事業者がお客様から報酬を得た上で、送迎用に運送事業者を手配したり、ホテル等の宿泊を手配したりすることは抵触してしまいます。

やっかいなのは監督官庁がこの「報酬を得て」とは「利益を得る」ことではなく、「金銭の授受を行う」ことであると解釈していること。お客様から一時的に代金を預かって、お客様の代わりに運送・宿泊事業者にそれを手渡すだけでも、「報酬を得て」に該当してしまいます。そのため、外部の運送や宿泊のサービスを手配する際は、あくまで無償サービスとして対応し、金銭の支払いは直接お客様にて行っていただく、というのが最も安全な運用となります。

 

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月11日号)