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キーマンに聞く

飲食店の成功はコンセプトメイク【ADLIVE代表取締役 松木 順水氏】
ブランディング、撮影ディレクションを手掛けているADLIVE(東京都目黒区)は、コロナ禍に業態の異なる3店舗の飲食店を開業した。田町のレストランは毎週貸切りパーティーを受注するほどの人気であり、さらにから揚げ店は東京ソラマチへのポップアップ出店を経て、現在は神楽坂、NEWoMan新宿内に2店舗を展開している。各店舗のコンセプトメイクと広告費をかけないプロモーションの成功は、ブライダル業界にも通じるノウハウだ。
SNSで発信されるから揚げ
――コロナ禍の2021年に、田町にレストラン【ビオターブル】をオープン。同年に中目黒に会員制和食店。2022年に出店したから揚げの【斉唐】は、現在神楽坂、さらにNEWoMan新宿と2 店舗を展開しています。料理長の退職で和食店は売却しましたが、ビオターブル、斉唐は非常に好調なようですね。
松木「業態の異なるそれぞれの店のコンセプトを重視しながら、プロダクトを作り上げてきました。ビオターブルについてはコロナ時に厳しい状況でしたが、昨年以降黒字転換し、団体の貸し切りも毎週コンスタントに入っています。また斉唐はNEWoMan新宿への出店以外に、現在も出店誘致の話が舞い込んでいるため、さらなる店舗展開を進めていきます。」
――明確なコンセプトによって、集客を果たしているそうですが。
松木「斉唐は1 店舗目を神楽坂にオープンし、さらに『おもたせ』商品によって立地との関連性、ブランディングを高めてきました。開業時から店のから揚げを気に入ってくれているモデルの常連さんがいて、フォロワー20万人のインスタに投稿してくれたことで話題になり、そこからNEWoMan新宿が注目してくれた経緯もあります。ニュウマンはルミネよりも少しアッパーのラインで、ファッション系もこだわりの強いアパレルを入れているため、モデルが支持しているから揚げ屋ということで声を掛けてもらいました。味はもちろん、神楽坂に調和した店舗の設えも含めて評価されたといえます。」
――から揚げ業態はコロナ禍に一時増えましたが、現在は閉店してしまう店も多いです。
松木「日本の食文化の一つとして確立していきたい、という想いで店をオープンしました。から揚げは、運動会や遠足の時などちょっと特別な日のお弁当に入っているのに、実際には惣菜の一つのように見られています。これだけ親しまれているからこそ日本の食文化の誇れる一品としてプロダクトアウトしていきたいと考え、神楽坂にマッチした店づくりにこだわり、さらに神楽坂らしいお土産の風習として9 個入りの『おもたせ』を商品化しました。そこは信念に紐づいていて、結果として話題性を集められました。」
――レストランのビオターブルはいかがですか。
松木「団体の貸し切りで一番多い使われ方としては、例えば1 人だけヴィーガン、1 人だけハラルで、他は全員普通の食事、お酒を飲みたいといったケースです。ヴィーガン、ハラルのその1 人が、会社の上役、または重要な営業先ということも多く、そこに配慮しなければならない。とはいえ専門店であると、それ以外の人たちの満足感は得られません。その点個別に対応できる認知が広がり、パーティー受注に至っています。」
――もともとは、ブライダルの二次会会場としての利用を見込んでいたそうですが。
松木「まず田町の周辺エリアに、二次会のできるような箱の店が少ない。また窓を全面開放すればオープンエアになり、さらにテラスもあることから、コロナ禍の受け皿になればと考えオープンしました。ちょうどその当時、私自身がファスティングにハマるなど健康志向を強く持っていて、グルテンフリーも実践していました。私も食べることができ、同時に他の人も楽しめるような店があったらいいと、コンセプトを作っていきました。日本の食文化や価値観も多様化していくのは分かっていたので、そういう価値観が生きる場所を作りたいと。もっとも私は料理人でもなく、さらに飲食業出身ではないため、シェフに関して色々と苦労も多かったです。中目黒の和食店もオープン後すぐに軌道に乗ったものの、料理長の退職で次の人材を見つけられず、結果として売却しました。シェフの扱いは難しいと痛感し、ビオターブルも方向転換。それまでの専門的料理から、ちょっとお洒落なファミレスを目指しました。シェフでなくても作れるレシピを追求。食材にはもともとこだわり、北海道からの直送や、野菜も栃木の無農薬野菜を毎週届けてもらっていたので、素材を重視していれば多くの手間をかけなくても味は満足できると。ちょっとお洒落なファミレスは、子どもから大人まで誰もが楽しめる料理を提供することであり、結果としてファミリー層、さらに食の志向の異なる団体などに評価される店となっています。」
――テラスはペット連れでも入れるようにしています。
クラファンで顧客を確約
松木「ワンちゃんを飼っているファミリー、夫婦がとにかく多い立地です。そこでワンちゃん専用メニューも出していて、健康に配慮し全て国産・無添加の食材を使っています。メインディッシュは、全て手作りです(笑)。現在月に2 回、店内でもワンちゃん連れOKというイベントを開催していて、毎回リピーターも増えています。これも一つのコンセプトで、地域に受け入れられていくことは大切です。最近はランチも連日満席なのですが、ヘルシーなイメージに評価も集まっていて、そこから夜に繋がっています。」
――コンセプトメイクは飲食のみならず、ブライダルでも重要です。さらに言えば、そのコンセプトをいかに広げていけるか。専門メディアに多額の費用を支払わなければならないブライダルに対し、飲食店はそこまで費用もかけられませんし、しかも競合が無数にあるからこそ難しいと言えます。
松木「中目黒の和食店については、オープン後すぐに軌道に乗りましたが、クラウドファンディングを使ったのは大きかったです。資金面でもトータル約1400万円の調達に成功。また会員制の店だったので、リターンとして会員権、食事券を配布したことで、ある意味その後の顧客を確約できました。それは一つの成功事例かなと思っています。から揚げ屋については、9 個のおもたせというプロダクトにこだわり、見せ方なども工夫。そのリリースを配信したところ、テレビや雑誌などの取材も入りました。それ以外にはインフルエンサーのPRイベントも実施。自社のインスタのフォロワー数もすぐに1000人にまで達しました。もっともプロモーションが成功したのも、他と差別化出来ているプロダクトあってこそだと思っています。コンセプトさえしっかりしていれば、メディアにも取り上げられやすいですし、またSNSで発信してもらった時の効果も高まりますから。コンセプトメイク、プロモーションの両軸で考えていくことは、ブライダルにおいても今後さらに重要になるのではと思います。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、7月1日号)