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集客割合の3割超目指す【ノバレーゼ代表取締役社長 荻野 洋基氏】

集客割合の3割超目指す【ノバレーゼ代表取締役社長 荻野 洋基氏】

 2025年のオリコン顧客満足度調査ランキングハウスウエディングでベスト3入りを果たしたノバレーゼ(東京都中央区)。22年8位、23年7位、昨年5位と、毎年順調にランキングをアップさせている。満足度向上は業績にも反映され、第1四半期(12月期)のブライダル事業の売上は前年比11.8%増となっている。満足度の向上によって、新郎新婦からの紹介・列席経験者の再訪というリピーター型の集客を図っていく重要性を荻野洋基社長に聞いた。

無理な施策も不要に
――最近は、ゲストとして参列経験のある人や新郎新婦からの紹介といった、いわゆる会場の存在を以前から認識しているリピーター型が一定数積みあがっている会場ほど、施行数も好調に推移しています。リピーター型の顧客を増やすためには、ゲスト満足度、新郎新婦の満足度が問われてきます。
荻野「私はこれまでもずっと、結婚式はリピーター産業だと言い続けていて、特にコロナ以降はその重要性をスタッフに対して強調してきました。ゼクシィ、SNSなど集客手段も多様化している中で、もっとも効果的な広告手段は当日の披露宴であると。今の集客方法は、広告を打って来館に導き、会場見学で決めていくのが王道。それに対し、もっと長期的な視点で取り組んでいく必要があり、当社の場合結婚式に参列する人の満足度と、そこからつながる未来の集客こそ大事だと考えています。」
荻野「新郎新婦が結婚式を挙げて良かったと感じ、数百万円の価値を判断する基準は、後々ゲストから『料理が美味しかった』、『いい結婚式だった』、『自分たちもやりたくなった』などと声を掛けてもらうことにあります。つまり、ゲスト満足度が新郎新婦の満足度にも直結している。さらにゲスト満足度は、自社はもちろんのこと、引いては業界全体のためにもなります。従来の挙式披露宴をしているカップルは婚姻数全体の半分以下だと言われているわけで、その割合を上げていくために一番大切なことは、当日のゲスト満足度のさらなる向上です。」
――新郎新婦からの紹介、列席経験者といったリピーター型の割合をどう見ていますか。
荻野「現在は集客全体の18%程度となっています。会社として紹介制度といったような施策を設けていない状況でもこれだけあるのは、一定数の満足度を提供できているからと考えています。もっとも、結婚式を実施した新郎新婦からの紹介をもっと増やしていくために、会社としての取り組みは今後より重要になってくるでしょう。ただ、紹介を目的に値引きするような方法は違うのではとも感じていて、現在は当社らしい方法をエリア長に検討させています。今後様々な取り組みによってリピーター型の割合を3割~4割まで高めていければ、集客コストも自然と減っていきますし、信頼できる人からの本当の口コミ効果によって成約率も上がってくるでしょう。受注確保のために、無理な施策をしなくてよくなるのも大きいです。」
商品力と接客力の両輪
――満足度を高めるために何が必要と考えていますか。
荻野「結局のところ【人の力】であり、優秀な人材を採用してしっかりと教育していく。基本的な部分ですが、何よりも大事だと思っています。当社の仕組みは、新規から打合せで担当は変更するものの、その後は打合せプランナーが当日の結婚式まで責任者として担当します。プランナーは、当日を熟知した上でそこから逆算しながら打合せを通じ結婚式を作っていく。そもそも当日を見なければ、果たして新郎新婦・ゲストは満足したのかどうか、打合せ通りにスムーズに施行できていたのかも分かりません。仮に当日は他の担当がいて、どのような結婚式だったかの情報共有はされたとしても、本当の満足度は測りかねます。さらに当日を知らない状態で打合せ時に様々な提案をしても、リアルなイメージを抱かせるという点で提案力は弱まります。オリジナルを提供する以上、当日に基づいていることは必須で、そうしたプランナー達によって商品の魅力も伝わっていくわけです。」
荻野「教育については、常にアップデートも必要。最近現場に行くと、進行表がほぼ同じであることや、当社のルールを型どおりに押し付けてしまっている状況もあったりします。例えばノバレーゼの一つのスタイルとして、結婚式で邦楽を流さないというルールがあります。ルールは大事である一方、それに凝り固まるのは良くありません。スタッフ自身『邦楽を流すのは悪いこと』と頭が固くなっている状態はどうなのか。改めて考えると、邦楽を流すかどうかという以前に、きちんと新郎新婦とコミュニケーションを取り、どういう思いでその曲を選んだのかという部分をきちんと理由づけができているかこそ大切。プランナーとしてそこを把握しつつ明確に説明できるのであれば、別に邦楽を流してもいいのではないかとも思うのです。これは【人の力】によるところで、だからこそ教育は重要です。商品アイテムと接客力は両輪であり、毎年カスタマイズした研修スケジュールを組んでいます。」
――当日の満足度を担保するためには、細かなクオリティチェックも重要です。そこはGMやエリアマネージャーの役割となるものの、形骸化しないためにはマネジメント層が現場をある程度把握して重要性を認識しておく必要もあるかと。
荻野「当社ではエリア長が土日の結婚式を見てくれる態勢となっていて、何かあれば私を始めとした役員のところにまで報告の入る仕組みになっています。その点で現状把握に関しては、一定程度確立されています。同時に私自身も、意識的に臨店はするようにしていますが、とはいえどうしても平日中心となります。平日の状況を見ることによって、現場の状態はある程度掴めるのも事実で、例えば電球が切れていて放置されている、備品が整っていないといった様子から各店舗の空気感を判断し、改善点をGMに伝えて気付きを促しています。ただ当日施行については、一番現場を理解しているGM、エリア長に権限委譲すべきであり、そうしないとたまたま私が訪れた時に発生した問題に対し、表面の事象だけを見ての判断になりかねず公正とはいえません。一つの問題に対して現場、そしてそれぞれのスタッフに背景や理由のあることも多いですから、そこは現場を熟知しているGM、エリア長の目を通して事情を把握していく必要があるでしょう。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、8月1・11日合併号)