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資本提携で狙う新たなビジネス【エスクリ 代表取締役社長 渋谷守浩氏】

資本提携で狙う新たなビジネス【エスクリ 代表取締役社長 渋谷守浩氏】

 昨年7月にティーケーピー、SBIホールディングスとの資本提携を相次いで発表し、さらに創業者である岩本博氏が代表権を外れるなど、まさに激動の一年であったエスクリ(東京都港区)。もっとも渋谷守浩社長は、生き残るためには当然の判断であり、さらに昨年の様々な出来事は今年の準備であったと語る。もともとブライダル経験があったわけではなく、他業種の経営者であったからこそこうしたドラスティックな対応を進められた側面もあるが、今後については自らの経営手腕が試されると言いながら、その自信は揺るがない。2020年の有事をいかに乗り越え、今後エスクリをどこに導こうとしているのか。

100年企業のDNA発揮

――まず、昨年の資本提携に至る経緯を教えてください。

渋谷「誰もが予測できない事態に直面し、あらゆる面で経営手腕が問われた一年だったかと。資金面に関しては肝の部分になるため、戦略的に計算しながら、その都度十分な資金調達をしてきました。資本提携は、一昨年からティーケーピーの河野貴輝社長と交流させて頂いており、コロナ以前から、結婚式というベースを起点に色々なビジネスが拡がっていくだろうと話していました。SBIホールディングスに関しても北尾吉孝社長との縁で、2019年にはインバウンド向けの【医療ツーリズム事業】を、SBIメディックとの提携により商品化。私の頭の中には、他業種企業との連携によるビジネス創出の設計図がもともとあったため、コロナ禍になり、資本を入れて頂くという部分だけでなく、業務提携をしてビジネスの相乗効果を狙うためのプレゼンをしました。」

 

――となると、今回の資本提携をきっかけに、エスクリがウエディングビジネスのみならず、ウエディングを中核にした様々な事業展開をしていく、良い意味でスタートの年になるようなイメージですか。

渋谷「そうですね。今回の提携の発想については、ザ・ウエディングの経営者にはどちらかというと邪道に見えるかもしれません。また、このシナジーを具現化するのは非常に難しいとも言えます。そんな器用な営業マンは、ウエディング業界の中にはそうそういないでしょうから。その意味では、有事において、他業種から合流した私のノウハウや経験は非常に役立ったのではと考えています。100年企業で₄ 代目というDNAは、お金を出しても買えるものではなく、時間と経験で作られていくもの。それに関して、私は恵まれた環境で経験を積ませてもらいました。以前から言っていますが、エスクリの中で良い化学反応を起こしていくことが私の役割です。その点アフタービジネスに向けた可能性として、ウエディングを取り扱うエスクリを起点にすることで、他業種企業とも様々なシナジーを生み出せると思っています」

 

2頭体制から判断一つに

――そもそもエスクリと渋谷も、別の業種であったわけです。

渋谷「私がエスクリの代表権を持った時も、創業以来初めて下方修正で減益の時でした。世間的に見ると、まさにエスクリがピンチの時期であり、つくづく思うのは、私は厳しい時ばかりにいるなと(笑)。」

 

――資本提携を機に、創業者である岩本博氏が代表権を外れたという点については、どのような意味がありますか。

渋谷「彼が起業してこの15年間は、どちらかと言えば右肩上がりの調子でした。ただ2₀16年に下方修正となったことで、それまで大事にしてきたものをどこかで変えなければ、会社や社員を守れなくなるという状況になりました。さらにこのコロナ禍は経験したことの無い究極の大ピンチであり、そこでトップが二分されていると判断がしづらい事もあります。どうすべきかを彼と相談し、これから即座に判断が求められる時にどちらが下すのかという選択で、私が進めていくことになりました。もっとも、金融機関の評価や、ティーケーピー・SBIに資本提携をお願いするにあたっても、私自身の覚悟を見せるべきだとも思い、75万株の投資をして、個人株主としては岩本と共にトップになりました。私自身がそうした背中を見せない限り、社員、銀行、監査法人、世間など、誰もが納得しないでしょうから。もちろん、100年企業を引っ張ってきた経験から、今後への自信はありましたが。」

渋谷「ブライダル業界も、これからは経営色が強い会社しか生き残れなくなるのではと思っています。もちろん、コロナ禍の有事が落ち着いたときには、ブライダルのビジネスモデル、商品、そして素晴らしい結婚式が大事なのは百も承知ですが、一方で、経営力をしっかり持った企業でないと今の状況を乗り越えるのは難しい。今年の夏や、年末を迎える事が出来ないわけです。そうした思いから、資本提携をお願いすると共に、そこから導き出される様々なビジネスを仕掛けていきます。それも他業種出身の、自分だからこそできることだと思います。」

 

――渋谷社長は常々、自分は次の経営者が育つまでの中継ぎと言っていましたが、昨年の事態でそういうわけにはいかなくなっているのでは。

渋谷「『次の経営者を育てる中継ぎ』として、どちらかというとあまり表に出ず、ウエディング業界の中でも目立たないようにしてきました(笑)。次期社長の育成を念頭に仕事をしているのは、今も変わりません。ただ、このコロナ禍で借入額も一気に増えました。育成した経営者を、初心者マークで送り出せるほど簡単な道ではなくなったのも事実です。しばらくは私がしっかりと舵を握らないことには、銀行、監査法人、資本提携を結んだ企業にも責任がありますから。結局のところ、社長の覚悟次第で金融機関は支えるかそうでないかを決めますし、資本提携もまた然り。私が背負ってしまった義理もありますし、逃げる事は出来ません。」

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、1月1、11日号)