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新郎衣裳の単価は6万円アップ【トリート Creative director 宇野 友祐氏】

新郎衣裳の単価は6万円アップ【トリート Creative director 宇野 友祐氏】

花嫁から圧倒的な支持を得ている、トリート(東京都港区)の運営するドレスショップ『THE TREATDRESSING(以下トリート)』。新婦だけでなく、メンズ衣裳の改革にも注力しており、新郎1人あたりの単価はこの10年間で6万円アップした。トークスクリプトの見直し、小物の販売注力など様々な取り組みに着手しており、顧客満足度向上を図ると同時に、現在の目標金額は30万円に設定。「日本人男性の身だしなみを整えていく」と意気込みを語る、Creative directorの宇野友祐氏に話を聞いた。

 

成長のカギを握るメンズ

――現在、メンズ衣裳の様々な改革を図っているそうですね。

宇野「もともとトリートは、ブランド創業者で現在代表も務める山城を中心に、『ブライダル業界全体の衣裳の〝感度〞を高めたい』との想いから、先陣を切ってインポートドレスの取り扱いをスタート。新婦の満足度も向上し結果として単価も一定上がり切ったとの認識で、今後ドレスの大幅な単価アップは難しいのではと。そこで、ブランドの成長を担う重要なカギの1つとして、メンズ衣裳の改革に着手しました。私自身2016年に新卒で入社しましたが、当時の新郎1人あたりの単価は12万5000円〜13万円台。現在はプラス6万円の18万円台まで上昇しています。今期は顧客満足度を高めつつ、単価30万円を目標にしています。」

――具体的な取り組みは。

宇野「トリートでは2015年頃からシャツやネクタイ、チーフ、カフリンクスの小物を販売中心に切り替えており、これが功を奏しています。ドレスは海外から人気かつトレンドのものを仕入れている一方、それまでのメンズ衣裳は変化に乏しかった。そこで、年に2回イタリアで開催されるメンズファッションの見本市『ピッティ・ウオモ』には必ず足を運び、世界基準の最新アイテムを仕入れています。レンタルで回転数を重視する戦略もありますが、いいものを毎シーズン新たに取り揃え、きちんと提案していくことが、新郎の満足度にも繋がるのではと。買い付けたアイテムのメーカー担当者を招いて、商品に関する研修も実施し、知識を深めています。」

――接客時のマニュアルも見直しを図ったそうですね。

宇野「もともとのマニュアルは、新しく入ったメンバーが接客の際困らないよう、一連の流れを記したものでした。そこを、既存スタッフのスキルを上げること、かつ目標金額をクリアできるような内容に刷新。定めた金額を達成するには、どの商品を売り、お色直しには何を取り込んでいくかを、金額から逆算して明確化していきました。例えば30万円の販売タキシードが売れれば、それも1つの道。イメージとしては目標金額に繋がるような複数パターンの導線を用意し、接客をしながら新郎がどのパターンに当てはまるかを見極め、各アイテムの案内を進めていくイメージです。こうした流れに変えたことで、タキシードの販売数は年間800着近くを記録。これだけのタキシードを受注できるブランドは、アパレル全体を見てもないのではと感じます。小物の中で最も単価の高いシューズにおいては、現時点で販売は約40%。年間2000足以上を販売できることは、シューズメーカーにとっても、インパクトのある数字と言えるでしょう。」

 

成績優秀者に買い付けの機会を

――スタッフの採用、育成にも注力しているそうですね。

宇野「私自身の入社当時は男性スタッフが10名程度でしたが、サイジングの観点などから、メンズアイテムを提案するにはやはり男性スタッフの方が売りやすいというのも事実。好調な業績も背景に、現在はハイブランドのアパレル出身メンバーなども加わり、男性スタッフは20名まで増えました。トリートの特徴としては、年次に関係なく買い付けに行けるチャンスがあることも、採用と育成の面では大きいかと。通常のアパレル企業は一定キャリアを積んだのちにバイヤーになる流れが一般的であるのに対し、当社はバイヤーのほか半期に一度の成績優秀者で、買い付けに行く仕組みにしています。また、アイテム別の取り込み率も週次で一人ひとり細かくチェック。上長との振り返りの際には今週良かった点、課題だった点を、まずは一旦自分で考えてもらう。こちらから指示するのではなく、なぜ提案しきれなかったのか質問を繰り返し、本人が考え答えを導き出せるようにし、成長を促しています。」

――今後の主な展開は。

宇野「メンズ衣裳に関しては、『そもそもどのアイテムを採用し、販売すべきか分からない』という声を耳にすることも。当社で培ってきたノウハウを注入するコンサルサービスを開始し、仕入れから商品販売、目標値の設定などをサポートできればと考えています。当社もトライアンドエラーを繰り返し、満足度を高めていった先に単価アップの成果に繋がりました。こうした成功事例を抽出し、今まさにトリートの現場でも起きている〝鮮度〞の高い情報を、衣裳会社に提供できるのではと感じています。」

 

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、4月11日号)