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《ブライダルAIの波①》接客シナリオも一瞬で明示【NOVIC 代表取締役 金田 昌彦氏】
今年に入ってから、ブライダル業界向けのAIサービスが次々に登場している。そうしたなか3年前から自社の業務にAIを活用し、その事例・効果をベースに他社への提案をスタートしたのが、カジュアルウエディングのプロデュース会社NOVIC(東京都渋谷区)だ。カップルの傾向分析、傾向別に個々のカップルに合った接客プロセス、進行表を弾き出していくなど、その活用は一歩先を進んでいる。金田昌彦社長の実践するAI対応を4回にわたり紹介する。
1. ブライダル業界に合わせたAIサービス
「新たに販売開始したWAICは、イマジエイト(東京都渋谷区)が提供する、金融機関などセキュリティ要求の高い機関向けに開発されたプラットフォーム【AIフォワードハブ】をベースにしたAIサービスです。当社でも3年前から活用してきました。ただブライダル業界においては、現場レベルに浸透させていくことを考えた場合、導入ハードルの高さもネックになるため、もっと手軽に使いながらAI対応を進めていける形を重視し、アプリ形式で各企業個別にアカウントを購入する形としています。導入後すぐに使用できる直感的なUIと、標準装備されたアプリ群を搭載していて、テスト運用・個別レクチャー・社内コンテスト・ナレッジ共有といった当社で実践してきた導入ステップも情報提供しながら、ブライダル企業にもスムーズに定着できる形になっています。」
2. 各社の連携
「ブライダル業界への導入をスムーズにするために、OEMで中継役を担う新会社楽生を設立しました。1アカウント単位、1社10アカウントからというパッケージで各社に提供していきます。当社はWAICを様々な業務に活用してきた経験もあるため、ブライダル現場に適した様々なアドバイスをしつつ、販売・導入を支援していく立場です。」
3. サービスの優位性
「ChatGPTのように外部に個人情報、社内機密情報が漏れる心配のない点が最大の特徴といえます。【AIフォワードハブ】は実際に、金融機関や大手上場企業でも採用されていて、Microsoft Azureのガバメントクラウド上で安全に運用されています。また、標準装備しているアプリの種類としては、クレーム対応、契約書レビュー、財務分析、ナレッジ検索なども備わっていて、即業務に活用できます。」
4. 活用事例
「当社で実際に活用している事例としては、多岐の業務にわたっています。例えば会場からの問合せが多い、新規接客時のサポート。AI内に当社のアンケートデータや接客ログ、顧客情報などを蓄積していて、AIに新たな顧客のデータを入れると2人、さらに新郎新婦個別の傾向もすぐに出てきます。44項目のアンケートの設計自体も、当社で成約する可能性の高い顧客データに基づいてAIが作成。ユーザーは回答しているうちに、期待値も高まっていく効果をもたらします。AIの弾き出す傾向は、行動タイプ、重視している価値観、意思決定のプロセス、ストレスポイントなど多岐にわたっています。それに基づいて個々のカップルに応じた最適な接客スタイルやクロージングトークまでを提示してくれます。例えばこのカップルには、こうした部分を強調すべき、逆にこうしたワードを使うのは良くないといったアドバイスもAIは弾きだします。実際の接客で、選択肢を先に提示して選ばせるスタイルが効果的なタイプか、じっくり話を聞き共感を積み上げていくスタイルが良いのかなど、具体的な方針も出てきます。当社では接客前にメンターや上司がプランナーと一緒に、AIから提案された情報をもとに事前想定を行い、接客方針をシナリオ化しています。」
「顧客傾向に合わせた提案によって、単価アップももたらします。AIと壁打ちしアイディアを深掘りしながら、提案シナリオも準備。当社では使用する花を入れたブーケのイメージを画像で生成することで、単価を高めています。」
「そのほかにもWAICでは、ナレッジサーチ機能や接客ログ分析機能も搭載していて、優秀なプランナーのノウハウを全社に展開し、品質の平準化を図ると同時に、育成支援にも活用しています。こうした対応により、マネジメント時間の削減や提案資料の自動生成による業務効率向上にも貢献しています。新規接客、教育に貢献する様々な機能以外にも、数多くのコンテンツを標準搭載。当社でも実際に、多角的に活用しています。例えばクレーム対応ナビでは、顧客からのクレームメールなどをそのまま入れれば、不満要因をAIが分析し、10パターン以上の適切な対応シナリオを提示します。契約書レビュー機能によって、簡易的な法務チェックがAIで可能となり、弁護士に依頼せずとも社内処理で完結します。財務分析機能では、BS・PLをもとにした経営シミュレーションも作成でき、経営判断のスピードと精度向上に貢献します。AIを使う際に悩みがちなプロンプト生成機能もあり、セールス文や提案文などを自動で構築できます。現在ブライダル業界のみならず、他の労働集約型業種にも提案を進めていて、汎用性の高い業務支援AIとし拡大を期待しています。」
5. 費用
「1アカウント月額5000円で提供していて、1企業10アカウントからの導入となります。従来400~600万円の導入費用のモデルに比べ、圧倒的に低価格での導入が実現しました。導入ライセンスは楽生社が保持し、販売・支援は当社で担当。最近ChatGPTなどを個人で使用しているケースも見受けられますが、これは情報流出という点で非常にリスクも高いといえます。その点WAICは社内情報や個人情報の安全性を確保した環境下での運用が可能なため、安心して業務利用できます。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、8月1・11日合併号)

