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専門分野に特化したシステム同士の連携【パプレア(左)代表取締役 峰崎揚右氏×PIEM(中)代表取締役 宮城光一氏×メイクィットエンタープライズディレクター(右) 草野 繁氏】

専門分野に特化したシステム同士の連携【パプレア(左)代表取締役 峰崎揚右氏×PIEM(中)代表取締役 宮城光一氏×メイクィットエンタープライズディレクター(右) 草野 繁氏】

 ブライダルの課題に対して各システム会社はどのように対応しているのか。さらにシステム会社同士の連携の必要性、会場のDX化に必要な考え方、AI利用が増えている中で、今後どのようにシステムに活用していくのか。ここではブライダルの各領域向けにシステムを提供し、歴史と実績のある3社をピックアップ。急加速で進化の進んでいるシステムに対してどのような意識を持っていれば、真のDX化を成し遂げられるかをQ&Aで掘り下げていく。

Q:各システムの領域は?
 宮城「当社のシステムONE-Wは、新郎新婦とプランナー間を結んで打合せを進めていく一般的にいう結婚式準備システムです。招待状のリストアップ、引出物、席次を決めるといった一連の準備を、オンライン上でプランナーが管理しながら、新郎新婦主導で対応していくのが特徴です。」
 草野「我々の提供しているESは基幹システムです。主な領域としては、来館予約から新規。さらに接客、準備、そこから請求・発注・入金・会計・締めの作業まで、一貫して取りまとめている形になります。」
 峰崎「当社は【パッとシリーズ】を提供していて、基本的に予約が入ってから、来館、成約までをカバーするシステムです。媒体や自社ホームページに予約が入ったタイミングで、そのデータを一元的に管理しています。最近多くの会場で課題になっている来館キャンセルを防ぐためのツールとして、予約以降に来館するまでのシナリオメールの配信サービスも展開しています。私たちのKPIとしては、とにかく会場への来館を高めていくことが、大きな目標になっています。」
Q:システム間の連携状況は?
 峰崎「メイクィットの提供している基幹システムとは、以前から連携を図っています。その仕組みとしては、媒体、ホームページを通じて入ってきたブライダルフェアの予約を、そのままES上に共有していくというところが基本になります。さらに最近進めているのは、事前のアンケートの連携。ESも自動アンケート機能を持っていますが、当社の【パッとZOI】の場合は、メールもしくはSNSにリンクを載せてユーザーに送信し、それを開いた新郎新婦が回答したものを直接取得できるようになっています。来館前に収集したアンケートを、ESに流すという連携も今始めています。」
 草野「基幹を中心に、各社が提供しているような様々なシステムを、自社で開発を進めていこうとしていた時期もありました。ただ、自社にエンジニアをそこまで抱えていない状況で、幅広い領域の様々な機能をカバーするのは、現実的に難しかったのも事実です。それならば各領域で専門特化しているシステム会社に得意な部分を任せていこうという考えから、連携させてもらっています。またONEWの領域は私たちのシステムにもありますが、会場の選択肢として必要ということで現在連携をしています。」
 宮城「当社は取引先会場も多いなか、ES以外の基幹システム、また互助会やホテルなどは業界独自のオリジナルシステムも持っているので、そうしたところと繋げていく必要もあります。実際に当社のシステム内で、基幹システムのように見積書を出せないかという声もあって、その分野の開発を進めていこうかという考えもありました。ただ、顧客毎にソースコードも異なっていて、苦労話もたくさん聞いていたため、リソースやメンテナンスの維持を考えると、自社で開発していくのは困難だという結論に達し、連携で対応しています。」
Q:導入企業側がオペレーションをシステムに合わす意識の必要性
 峰崎「本来の考え方としては、システムに業務を合わせていくことで、効率化もより発揮されていきます。ただ実際には難しいと言えます。特にブライダルの場合、それぞれの会場のこだわりもあって、企業毎に異なる独自性を何よりも大切にしているため、一般的な業種とは異なると思います。」
 草野「現実としてシステムを企業のオペレーションに合わせていくという意識も強いため、最初は何でも要望を受けていました。最近は実績も増えたためにパターン化してきていて、A・B・Cのどれに当てはまるかというように提示をできるようになってきました。ある程度のパターンに合わせてもらうことで、コストが削減されるというのは実際にありますから。これは導入時の課題もあって、システムに合わせて全てを変えるのは、システム担当者にとって大きな負担となります。社内的にも、それまでのやり方を変えることへの抵抗の空気も出てきます。そこでまずは会社の現状のフォーマットに合わせて導入を進め、その後にESを使いこなしていってもらいながら、段々パターンに合わせていきます。もう一つ当社の場合、コンサルによって売上を上げるサポートもしていて、その延長線としてESに切り替えたほうが良いと提案している面は大きいかと思います。売上向上とコスト削減の両面から対話の出来ることで、よりシステムの重要性も伝わっているかと。」
 宮城「レストラン、ホテル、ゲストハウス、互助会という分類の中でも、やり方は様々です。結局のところ、顧客の声を拾って提案していくしかないと思っています。もっとも3社ともにある程度の歴史と実績があるので、その使い方に慣れているプランナーや現場スタッフも増えているのは追い風になっています。ある意味合わせてもらいやすくはなっている面もあると感じています。」
Q:IT化とDX化その違いは?
 草野「DX化は、○○を○%削減するといった発想より、そもそもやらないという選択肢を作ることだと考えています。限られた人数で業務を回していくという意味では、当社でもそれを実践しながらシステムにも反映させています。例えば領収書の写真を直接システムにアップロードして報告を不要にするといった自社の対応が効率的だとなれば、その仕組みをESに載せるなどして活用しています。また、プランナーの業務を理解するために、毎週さまざまなブライダル業界の人たちと情報交換し、他業界や最新の便利な仕組みをミックスさせながらの提案もしています。共通するのは、人が何かをしなくても対応できる仕事、自動で完結できる業務をどれだけ実現できるかという考えで進めていること。いわばテキストの不要になる仕組みをどれだけ積み重ねていけるかというのが、我々の考えるDXの方向性です。」
 宮城「DXは人材不足を補う、つまり生産性をいかに上げるかという点と、スキルを補うという視点も非常に重要。新人プランナーでも一定の品質でプランニングをできるように、経験を補完する仕組みづくりです。」
 峰崎「ブライダル業界でDX化という言い方をすると、その境界線がどこにあるのかということも含めて、システム会社側が意識しなければいけないことも多いと感じています。システム会社としてDX化しましたという謳い文句で自社のサービスを提供したとしても、実際に現場で使えないという状況も出てきますから。例えば、当社で提供している予約から来館までのプロセスで対応するレコメンド発信一つとっても、自分たちで文章を作ってくださいねと依頼しても、それが難しい状況では現場で使えないわけです。そうなると本来であれば会場側のマーケティング担当者が行うべき領域の仕事も、システム会社としてフォローしなければいけないという事態になります。だからこそ、単なるシステム提供ではなく、コンテンツ制作やマーケティング支援といった機能も担うことが、これからのシステム会社に求められ、さらにDXのカギになると考えています。」
Q:AI化にどう対応する?
 宮城「最近よく聞く声は、プランナーがプランニング業務以外にも多くの問合せ対応に追われているという状況。電話対応は非常に多く、その内容に関しても駐車場はありますか?といったよくある質問ばかりです。こうした問合せについて、AIによる自動応答の仕組みを欲しいという声もあります。もちろん会場ごとに駐車場の有無や台数などの条件が異なってきますから、そうした個別の情報を蓄積していかなければ、AIの実用的対応は難しいと思っています。」
 草野「社内でもAIの話題は多く出ていて、会場からの問合せもあります。ただその時に懸念されるのは、どこまでの情報を扱っていいかという点。例えば接客で交わされた会話を文字起こしして記録するという話も、自社独自のノウハウが多く含まれているため、それをAIに入れ込んでいくのは抵抗もあると考える会場は多いです。また、OpenAIにデータが渡ってしまうのでは?という懸念も出ていて、こういった背景からもAI活用については慎重に、情報漏洩のないようにコントロールできる体制が求められています。ChatGPTのようなツールをプランナーが使う場合も、入力した内容次第で、意図せず企業外に漏れるリスクもあるからこそ、慎重にならざるを得ません。」
 峰崎「AIの使い方として、既存システムとの親和性は非常にあると感じています。これまでマネージャーのチェックしていたプランナーの業務をAIに任せる、人間のミスしやすい部分をAIでサポートするといった使い方には可能性を感じます。また、現場ではメール対応に時間を取られていることも多いので、メール文をAIに生成させ送るというような導入方法も現実としてすぐに活用できるものです。ただ、せっかくAIが登場しているのに、会場側の理解や使い方はまだ追いついていないという印象もあります。その背中を押す一つの理由を作っていくうえでも、システム側である程度AIの機能も併せ持つことで、自然に使っている状態を作っていく。それが数年後に、価値になってくるでしょう。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、8月1・11日合併号)