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キーマンに聞く

余剰した時間でロープレを強化【ザ・ガーデン・プレイス蘇州園 総支配人 兼 人事室長 村田智則氏/TAIAN 代表取締役CEO 村田磨理子氏/ザ・ガーデン・プレイス蘇州園 ブライダルマネージャー 上田昌樹氏】
進むブライダルDXだが、システム化によって効率化を実現するだけではDXとは言えない。働く環境、仕組みに変化をもたらし、さらに業績アップに貢献できるかどうかが問われてくる。昨年6月に、TAIAN(東京都新宿区)のシステムを導入したザ・ガーデン・プレイス蘇州園(神戸市東灘区)。システム導入後に集客、成約率もアップしているわけだが、そのプロセスを村田智則総支配人、上田昌樹マネージャー、TAIANの村田磨理子社長が語り合った。
確度の高い集客も実現
――システム導入で効率化実現だけでなく、会場の業績アップにいかに寄与できるかが今後は大切になってくるかと。
村田(智)「因果関係については正確に弾き出せない面もありますが、昨年6 月にシステムを入れてからマーケティングに集中できるようなり、神戸エリアの中でも優位に立てるような集客はできています。当社はウエディングプランナー全員でマーケティングに携わり、ポータルサイト担当者がいるなど、一つひとつを自分たちで管理をしながら運用しています。その時間をきちんと作れるようになったことで、集客にもいい影響を与えているかと。新規のロープレの時間を持てるようになり、成約率も上昇。事実として、昨年は業績も上がりました。」
上田「前年から比較すると成約率は10%弱前後高まっていて、今でも維持しています。集客後にLINEアンケートをきちんと取り、それをシステムで管理することによって、成約確度も高まってきていると考えられます。集客面でも、マーケット自体は縮小をしているのに対し、エリアにおけるシェアが1 %上昇。これはシステム導入のタイミングにも合致していて、成果として考えられます。」
――教育面への影響は。
上田「システム導入前も、月何時間は個人別でロープレをしましょうという目標は立ててはいたものの、どうしても業務に追われ、3 時間を目標にしていたのに2 時間しか出来ないなど形骸化していました。導入以降のこの1 年間を見ると、個人個人の立てている目標時間をクリアできています。教育をしっかりできたことで、成約率に結びつくような流れでもあったかとと思っています。」
――効率化により、従業員満足度にも貢献しています。
村田(智)「実際に、残業代の支払い自体は少なくなっていますし、以前に比べて生き生きと働いている印象です。システム導入によって、会社の描いている道をスタッフ達が理解したのは大きいかと。そもそも全体の半分の5 名がZ世代の中で、無駄と感じることを相変わらずさせる会社で働くのはしんどいですから。電話をかけない、かけて欲しくないと思っている人たちに、電話対応を強要するのがこの業界。それに対し、当社としてはシステムを入れることで、無駄をなくし、もっと顧客に向き合うという方向性を打ち出したわけで、その方向性にスタッフの満足度は高まっていると考えています。もともと退職するメンバーは少なかったのですが、この1 年は1 人も辞めてなく、昨年採用した新卒社員も生き生きと働いています。」
――システムを入れる前の状況はどうでしたか。
村田(智)「セールスフォースを使っていて、見積もり、請求書の管理と出力する程度。顧客管理についてはメモとデータで残ってはいても、横展開する形ではなかったですね。集客についても、ポータルサイトから入ってきた顧客データを、セールスフォースに入力。受発注の機能はなく、FAXでの対応でした。個人的には電話・FAX文化を古いと思っていて、私自身、何とかゼロにしたいと考えていました。それを解消するシステムを探していた中で、今回TAIANと話しながら、スタートアップとしてこの業界に飛び込んできて、変えてやろうという気概みたいなところに共鳴し、導入を決定しました。」
村田(磨)「それまで展開していた機能で十分カバーできた部分もあれば、まだ出来上がっていないところもありました。そこも含めて意見をもらいながら、一緒に作っていくというところに共感、同意してもらい、会場に合わせて完成していったイメージです。」
――運用までの対応は。
上田「私がフロントに立って対応していきました。導入にあたり、以前のやり方とは全く別のものだという認識を持ってスタートしたので、作業的に不明な部分はあっても、考え方として違和感はありませんでした。実際に現場プランナーの作業の流れ、打合せの流れを踏まえた上で作ってもらった機能も多く、また咀嚼の段階でも分からないことがあれば、レスポンス早く対応してもらったので、困難に感じることはなかったですね。当社には10年以上働いている30代のメンバーもいますが、そこに向けて細かく勉強会も実施し、社内のマニュアルを作っていきました。もっとも、私が先に進めていたため、すぐに答えられる蓄積もありましたし、その点ではスムーズに現場に浸透していきました。」
村田(磨)「システムを入れ替えることに対して、基準が高いと感じます。システムが変わるという言い方ではなく、全く別のものに変わるから、それによって顧客体験も良くなるというところを、しっかりと現場の全員に伝えた上で、上田さん自身が先に使い方を覚えていきました。DXでは現場の反発に対して説得が必要になることもあるのに対し、上層部の部分から進めてもらった経緯は、私も勉強させてもらいました。」
村田(智)「例えば脱ゼクシィにマーケティングを変えたのも、そこに多額の料金を支払うのであれば、従業員の給料を上げた方が絶対にいいという考えです。その点では、以前使っていたシステムも多額の料金はかかり、それならばもっと使いやすいものに変更して時間を作りつつ、余剰した分を従業員に還元する。私の目的はそこにあって、目的に向かうためにシステムというツールを導入したという感覚です。従業員にも伝えてあるので、それは理解してもらっていると考えています。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月11日号)