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人材こそがベース 現場重視は変えず【ノバレーゼ 代表取締役社長 荻野 洋基氏】

人材こそがベース 現場重視は変えず【ノバレーゼ 代表取締役社長 荻野 洋基氏】

今回の合併発表を受け、急遽ノバレーゼの荻野洋基社長へのインタビューを実施した。現在は融合のために各部門の小委員会をスタートしたばかりで、まずはお互いを知って理解していくという段階。渋谷会長、荻野社長体制は内定しているものの、ブライダル企業としてどのようなスタイルになるのかはこれからとなる。もっとも、荻野社長が大切にしてきた現場重視、さらに人をベースにした考え方は、新会社の経営にあたっても大きく変わらないようだ。

――今回の合併によって、お互いの強みを融合していくという話をしていますが、ノバレーゼの強みと弱みをどのように考えていて、融合によってどう補完できると考えていますか。
荻野「地方展開でしっかりとシェアが取れているのは、当社の一つの強みと考えています。ライバル社の少ないエリアで、当社の立ち位置を確立できている。ただ一方、3 年後、5 年後といった中長期的な視点で見ると、私たちの展開している地方店舗は、エリアの過疎化も進みどんどん人口は減少すると予測もされています。地方の結婚式がこのまま減っていけば、現在の地方展開は弱みに転じる。それもあって、以前からマーケット規模の大きい都市部での展開も必要だという考えを持っていました。もっとも、都市部への出店はコスト負担も大きく、ワンバンケット運営では厳しい。その点、エスクリは都市型店舗を中心に、これまで駅直結やビルインなどの展開をしてきました。つまりブライダル業界内を見ても、当社にとって最もシナジーが生まれる会社であり、地方展開の今後のリスクを充分にカバーしてくれる存在です。」
――記者会見では対等合併であることを強調しています。
荻野「対等であるという精神は、すごく大事だと思っています。形式としては、ノバレーゼが存続会社になりエスクリは消滅しますが、あくまでも形式であり、中身は対等合併。仮に逆の立場であればノバレーゼのスタッフは相当ショックだったと思うからこそ、対等であることは改めて強調しておきます。今後新しい価値を作っていく上でも、お互いの優秀な人材が一つにならなければなりませんし、そうでないと絶対にうまくいかないはず。そのために最初の1年間は両社で慎重にすり合わせをしていき、すぐに何かを変えるのではなく、お互いのことをよく知っていく。私自身もエスクリのことをもっと知らなければと考えています。その上で、スタッフのため、顧客のための視点で話し合いを重ね、新しい価値を作っていきます。」
――これは私の印象ですが、荻野さんの強みは現場に軸足を置きながら手腕を発揮していくタイプ。一方でエスクリの渋谷さんは、SBIとの資本業務提携に代表されるように、業界外のネットワーク・人脈を活かして、ブライダルに新しい風を吹き込むのが得意かと。その点、2 人の今後の役割分担もある程度見えてきて、強力タッグとして非常に魅力的だと思うのですが。
荻野「仮にお互いブライダル現場からの叩き上げであれば、自分のやり方を重視する余りにぶつかることも出てくるのではと思います。その点では、現場経験のある私に対し、渋谷さんは豊富な社長経験によるノウハウを持ち、さらに人脈も幅広いですから、そこのすみ分けはいいバランスになるかなと。年もかなり離れているのは、良いことだと思っています(笑)。」
――両社の大株主であるTKPの河野社長は、業界再編の重要性を語っていました。荻野さん自身はどう考えていますか。
荻野「特に地方では、厳しい状況の中小会場も増えていて、実際にM&Aの話も舞い込んでいます。今後倒産や会場閉鎖などの可能性が増していく中で、そうしたニュースは業界にとってプラスにはなりません。大手の役割の一つとして、そうならないように早い段階で一緒になって再建の手助けをしていくことも必要ではないかと。淘汰されていく会社が増えるよりも、何か一緒になってやっていこうという会社が増える方が業界は活性化されます。もっともこれまでは、どこかの会場をサポートしようと考えても、仮に都市型で複数バンケットの会場であった場合、当社としても手を挙げる勇気はありませんでした。今回その分野でノウハウを持っているエスクリと一緒になったからこそ、条件なく『どうしたらできるか』を考えていけますし、それが業界再編になっていくのではと思っています。現状のブライダル市況をみれば、いいタイミングだったわけです。」
――経営者として、今後どういった目標を立てていますか。
荻野「ブライダルを、もっと明るくて夢のある業界にしていきたいという想いは強いです。その根本は、働くスタッフがもっとやりがいと誇りを持てる環境を作っていくことでしょう。今のブライダル業界は、他業界と比較しても給料が安く、一方で責任は重い。それでもこの業界に残って頑張っているスタッフたちがいて、人の笑顔や幸せのために働いています。そうしたことを考えても、私はブライダルのスタッフは、本当に魅力的な人材が集まっていると思っています。だからこそやりがいと誇りを持ち、給料や報酬がしっかりついてくる会社にしていきたい。やはりベースは人であり、やりがいが上がれば数字も自然と伸びていくでしょうから。とは言え、それを成し遂げるためには、結婚式はもちろんのこと、周辺ビジネスや新規事業展開による収益の確保も大切になります。特に、結婚式をキッカケとして、人生のライフイベント全てを任せられるような会社にしたいと常々考えてきました。今回の合併により、ゼロイチで作っていくだけでなくノウハウをM&Aで取得できれば、さらにスピードを持った新規事業展開も可能になります。」
――荻野さんはこれまでも様々なタイミングで、全店舗を回りスタッフとの直接コミュニケーションを通じて現場の意見を収集、それを経営に反映してきました。こうした対応は、今後エスクリの店舗でも考えているのでしょうか。
荻野「最近も全店舗を回って現場の課題や不安、会社への要望などを直接聞いていました。それはこれからも続けていきたいと思っていますし、同じことをエスクリの店舗でも行い、コミュニケーションを取りながら現場の声を直接聞きたいというスタンスに変わりはありません。特別にエスクリに集中していくということではなく、ノバレーゼの店舗も含めて平等に全てを回りながら、ざっくばらんに意見を聞いていきます。昨日(取材日は11/18)、ノバレーゼの全スタッフに合併に関する説明をしました。今回の合併について、何よりもスタッフの反応が最大の不安でした。役員陣はプラスだと思っていても実際に現場スタッフたちはどう反応するのか。結論として前向きに捉えてくれるスタッフが多かったとは言え、今後は社名の変更も検討しているため、本音の部分で不安もあるでしょう。それも含め、これからまた現場を回って、直接スタッフに説明をしていかなければと考えています。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、11月21日号)