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システム会社をMA【ジュノー 代表取締役社長飯岡 大昇氏】

システム会社をMA【ジュノー 代表取締役社長飯岡 大昇氏】

昨年創業40周年を迎えた、映像・写真撮影会社のジュノー(横浜市都筑区)。一つの目安を迎え、さらに次なる時代へのスタートとなる今年の6月1日、創業者の飯岡大学氏が相談役に退き、息子である飯岡大昇氏が新社長に就任した。ウエディングでは従来の撮影分野のみならず、様々なサービス展開によって新郎新婦・会場のサポートを推進。さらにブライダルで培ってきたノウハウを、他業種にも展開していくチャレンジには注目だ。

――40周年を節目に、今年新社長に就任したわけですが、現在の想いはいかがですか。

飯岡「40年間、先代の社長が大切にしてきた基本的な路線は変わりません。当社にとってのお客様は、式場であり新郎新婦です。式場に対してはただ受注を待っているだけでなく、新規の段階から一組でも多く取ってもらえるよう様々な協力をしてきました。例えばプランナー向けの接客トーク集、料理長の想いを伝えるムービー、料理アルバム、HP制作など。こうしたツールの制作によって新規集客や成約率向上の役に立っていく姿勢は一緒です。また写真・映像に関しては、受注した新郎新婦からの満足度が高ければ、次に繋がっていきます。そのクオリティ追求は、今後も継続していきます。」

飯岡「一方で変えるべき部分としては、クリエイティブに対するこだわりがあります。SNS時代でユーザーの写真・映像に対するこだわりも高まっているからこそ、会社全体の意識をもっと変えていかなければなりません。例えば今までの結婚式写真はこうだからこれでいいではなく、これから先の動きも見据えて、望まれる写真とは何なのか。技術力の向上、トレンドの研究を含めてクリエイティブ力をさらに高めていきます。」

―― 2 年前には、WEB招待状、QR受付、ご祝儀事前決済のシステムも開始しました。

飯岡「結婚式ユーザーである、若い人が当たり前に使っているものに合わせたデジタルツールを作っていくという考えから開発しました。構想自体は5 年以上前から持っていて、結婚式にどんどんデジタルを取り入れていくべきと。結婚式を見ていると、一生に一度の晴れ舞台なのに、親や親族が数100万円の現金を持ち歩かなければならないわけです。またゲストへのおもてなしと言いながら、受付で並ばなければいけないという課題もあります。こうした状況をシステムで解消できれば、それこそウェルカムパーティーをもっとゆったりと出来るでしょう。」

飯岡「システムに関しては、現状のツール以外も考えています。例えば写真アルバムも、新郎新婦自身でデザイン、レイアウトをWEB上で作れるようなシステムは出来ないかなど。ユーザー自らのこだわりを、デジタル上で表現する時代ですから。当社の事業としては、あくまでも写真・映像メインであるものの、システムも含め面白い仕事であればどんどん広げていくというスタンスです。」

――そうした発想は、広告代理店に勤めていた経験が大きいかとも思いますが。

飯岡「ジュノーを一度離れて、約5 年間勤めました。ブライダル業界を外から見た時に、もっとこうすれば変えていけるのではという考えも広がりました。実際に広告代理店ではYahoo!の電子チケットの担当として、アーティストの特集ページの制作、ニュース記事の撮影などを手掛けていたわけですが、この電子チケットは、メディアのYahoo!とコンテンツ会社のエイベックスのアライアンスで生まれたもので、アライアンスを組む重要性などを経験出来たのは良かったですね。WEB招待状の案も、電子チケットのアイデアが元になっています。」

ノウハウを他業種で展開

――2022年にはシステム開発会社をMAしましたし、その前年には子会社も設立するなど、社長就任を見据えて新たな体制の準備を進めてきました。

飯岡「デジタルツールをスピーディに開発する上でも内製化したいと考え、4 年ほど前からMA先を探していて、GoingNをグループ化しました。コロナ禍ではありながら、先代も理解を示してくれたのは大きかったですね。また子会社のルリエ設立に関しては、ウエディング以外のプロモーション案件を受け始めたタイミングで、ブランディングの観点から会社を分けた方がいいということがキッカケです。実際に他業種企業がジュノーの導入事例を見ても、ウエディングばかりであれは混乱するでしょうし、その逆も然り。子会社の設立によって、ウエディングはジュノー、それ以外はルリエで対応できるようになっています。HP制作、ポスター制作、企業の採用ムービーなど、プロモーションを手掛けていて、ブライダルで培ってきたジュノーのノウハウを他業種でも展開しています。」

――マネジメント面での課題と、今後の対応については。

飯岡「やはり人材採用は最大の課題と言えます。新卒採用については先代がこれまで力を入れてきたこともあり、15年分のノウハウを活かして希望採用数に関しては毎年クリアできていますし、内定辞退率もここ数年はゼロです。やはり厳しいと感じるのは中途採用。給与条件も相応にしなければ採用出来ない状況ですから。またコロナでブライダル業界のカメラマン自体が減っているため、その分フリー人材のギャラ相場も急騰しています。絶対数の少ない中で、今後はゼロベースの未経験者を積極的に雇用し、入社後にノウハウを教えて育てていく方向へのシフトを考えています。教育コスト増にはなるものの、デビュー後の定着を見越した中長期の視点が必要かと。」

飯岡「採用の厳しい状況であれば、社員の定着率を上げる取り組みも重要。その一環として、昨年から年間公休日を増やしています。例えばGWなどはどうしても休めないからこそ、代わりに6 月、7 月に夏休みとは別にまとまった連休を設けるなど。若い人材は、給与条件以上に、こうしたワークライフバランスを重視する傾向ですから。さらに、今年からフレックス制も導入しました。アルバムの制作、画像処理、動画編集であれば在宅のリモートでも出来ますし、多様な働き方の環境整備や意識醸成はさらに求められるでしょう。撮影会社はフリーなども含めれば人件コストが70%に達するためコスト増は厳しいものの、今の働き方に合わせたマネジメントを進めていく上では止むをえないと考えています。」

詳細はブライダル産業新聞紙面にて、7月1日号)