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ゲストの心に響く挙式を創る 気持ちを動かす情景描写【テイクアンドギヴ・ニーズ ウェディングアドバイザー 有賀 明美氏】

ゲストの心に響く挙式を創る 気持ちを動かす情景描写【テイクアンドギヴ・ニーズ ウェディングアドバイザー 有賀 明美氏】

テイクアンドギヴ・ニーズ(東京都品川区)のウェディングアドバイザー・有賀明美氏は、「挙式の価値向上が必要不可欠」と力説する。オリジナリティのあるパーティーの様子はSNSなどに溢れる一方、挙式の内容はどうしても薄くなりがちだ。新郎新婦の満足度を高めると同時に、ゲストにとっても忘れられないセレモニーにできるかどうか。有賀氏の挙式にかける想いと同時に、自身でプランニングした際の具体的な取り組みなどを聞いた。

 

ほんの少しのアドバイス

――オリジナリティを出しやすいこともあって人気の人前式ですが、有賀さん自身まだまだ改革の余地はあると感じているそうですね。

有賀「全体的に見ても、挙式の内容はどうしても〝薄く〞なりがち。プランナーもパーティーのプロデュースには注力する一方で、挙式の内容は二の次になってしまっていると感じます。ちょっとした工夫、MCからの一言を加えるだけでも、挙式の価値は大きく上がります。人前式は特にそうですし、キリスト教式の場合でも、例えば牧師から、2人だからこその聖書の言葉を引用してもらうなど。挙式の内容をもっと深めていくことは、業界全体の課題と言えるでしょう。」

――具体的には。

有賀「先日も知人の挙式プランニングを担当しましたが、私自身取り組んでいるのは本当に〝ちょっとした〞ことです。例えば、新郎の幼馴染からのメッセージ。どちらかと言えば披露宴に組み込むのが〝一般的〞なシーンの一方で、挙式だからこそ伝わる想いもあります。幼馴染からのメッセージを挙式で述べてもらうことが決まり、事前にそのゲストに私から電話を。当日話してもらう内容を、ほんの少しだけアドバイスしました。『当日の空気感はきっとこんな感じですよ』、『こういったエピソードを入れてもらうといいですよ』と、本当に些細なアドバイスです。その電話で聞いたのは、ずっと仲のいい幼馴染ということもあって、その友人は面白おかしく、思わず笑ってしまうようなメッセージを考えていたとのことでした。もちろんそれも素敵ですから、『新郎もきっと楽しみにしていますね。できれば真面目なメッセージも最後に少しだけ加えて、想いを伝えてみませんか?』と提案。内容を全て変える必要はないですし、2、3行だけでも、十分想いは伝わります。実際に式当日の新郎は、その友人からのメッセージを聞いて、嬉しそうな笑顔と同時に目を真っ赤にしていたのが印象的でした。その温かい空気感は、ゲストにも十分伝わったと感じます。」

 

イメージを掻き立てる

――参列者の心にも響く挙式にするには、シーンの情景がポイントの1つになるそうですね。

有賀「人気の演出のリングボーイ/ガールですが、ある新郎新婦の挙式でリングを運んだのは、新郎が大好きなおばあちゃん。新郎は実家に帰るたびにおばあちゃんの背中を流すのが恒例行事となっており、その際に看護師時代の武勇伝を聞くのが楽しみだったそうです。友人ゲスト、特に新婦側はそうした関係性を知らないケースも想定できますから、バージンロードの距離とおばあちゃんの歩く速さも念頭に入れながら、リングを運ぶ際にそのエピソードをMCの口から伝えるようにしました。仮にこのシーンに説明がなければ、2人の関係性を知らないゲストからすると、『リングの担当はおばあちゃんなのか。きっと仲がいいんだろうな』だけで終わってしまいます。一方で、MCからの言葉を通じきちんと情景描写まで持っていければ、背中を流しながらおばあちゃんの話を嬉しそうに聞く、新郎の姿をイメージできるわけです。それだけでゲストの表情もがらりと変わりますし、家族はもちろん友人にとっても、心に響く忘れられない30分になるわけです。」

――ほんの少しの〝スパイス〞で、ゲストにとっても大きな意味を持つ挙式になるということですね。

有賀「1日の回転数などによって、挙式・披露宴のそれぞれの時間配分は各会場大方決まっているかと思いますが、例えば挙式をプラス10分、その分披露宴を少し短くするなど、1日を通じて時間内に収めるアレンジもできるはず。パーティーに加えて挙式もさらにこだわるとなると、『そもそも準備時間が足りない』と思う人もいるかもしれませんが、これまで通りのヒアリングに、たくさんのヒントがちりばめられています。働き方の面で思うのは、例えば産後正社員、フルタイムで働くことが難しいプランナーなどもいるでしょうから、挙式に特化してプランニングにあたるといったこともできるのではと思います。それだけ挙式のプランニングには、業界全体で注力していくべきと感じています。披露宴はゲストにとって、食事を楽しむ時間とも言えます。一方で挙式は、ドリンクもなければ食事も出ない。全員がカップルの言葉や誓い、表情に没入できる、いわば〝チャンス〞の時間です。ほんの少し、もう一歩を踏み込むことで、『今日の挙式は本当によかった』と、新郎新婦はもちろんゲストの心に響く、忘れられない時間をプロデュースできるはずです。」

 

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月11日号)