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みんなのW×ブライダル産業新聞合同企画 〔連続企画第8回【下見・契約手法】〕評価が分かれる  即決特典の有無【みんなのウェディング レビューアナリスト 黒須裕子氏】

みんなのW×ブライダル産業新聞合同企画 〔連続企画第8回【下見・契約手法】〕評価が分かれる 即決特典の有無【みんなのウェディング レビューアナリスト 黒須裕子氏】

 ユーザーからの口コミが会場のCSを測る基準であるならば、どのような視点でチェックしていくべきか。くふうウェディング(東京都中央区)の『みんなのウェディング』と本紙合同でそれぞれのカテゴリーの傾向と分析をまとめていく連載企画。8回目の今回は、【下見・契約手法】。下見に訪れたユーザーは、会場の契約手法に対してどういった部分を評価し、はたまた不満を抱くのか。成約率アップに導くうえでも、投稿から学ぶべき点は多い。

5時間以上は負担感増す
 昨年の6月から今年の5月までの期間の口コミについて、評価点数4.0以上をGood、4.0未満をBadとして抽出。まず当日成約特典については、ポジティブ、ネガティブ両面の反応が存在している。特典や値引きを過度に強調する、今日決めないと特典は喪失するといった接客はネガティブな印象を与えている傾向があり、特典のあるなしではなく、どういう戦略で伝えているかによって評価はどちらにも振れるという状況だ。
 「4.0以上のポジティブな内容を見ていくと、対応や提案の質が高く評価されていて、特に丁寧、熱心、親切といったスタッフへの好印象は多く見受けられました。一方でネガティブな意見は、主に対応面に集中。スタッフの説明が不十分、初めての見学なのに即決を迫られた、長時間続いたなど、時間の拘束や強引な接客に対する指摘は数多くありました。契約に対する圧力の強さは、マイナス要因となっています。ネガティブなデータには、“契約”というワードが頻出しているのも、一つの特徴といえます。」(プロダクト企画部部長・竹中達郎氏)
 評価点数4.0未満のデータだけを抽出してテキストマイニングにかけた結果、 “強い”に関するワードがネガティブ要因の上位に上がっている(具体的な使われ方は上図を参照)。契約時に圧力を伴った“強い”印象を与えているかどうかは、顧客満足度にも直結している。
 具体的な投稿を定性的に見ていくと、契約手法が低評価に繋がっている要素は以下の通り。【拘束時間の長さ】、【即決】、【契約を断ると態度が一変するスタッフ】、【他会場の悪口】。口コミだけでなく、ユーザーに直接行ったアンケート結果を見ても、同じような傾向であった。
 「拘束時間については3~4時間程度が許容範囲で、5時間を超えると負担感が大きくなり、疲れた、もう帰りたいといった反応に変化します。中には7~8時間拘束されたという事例もあり、帰してもらえなかったといった記述も複数確認されています。長時間拘束されることは、強いストレス要因になっているようです。」(レビューアナリスト・黒須裕子氏)
 当日即決に導こうとする余り、特典が今日までといった表現に対して、不快感を示す口コミも多数見られる。また即決を目的にした対応では、驚くような事例も見受けられる。『隣の席のプランナーが、明日交通事故に遭うかもしれないですよと脅しのような表現を使って、その場での契約を迫っていた』、『両親が費用を出すので相談しなければと伝えると、今この場で電話してもらえますかと求められた』という投稿もあった。
 「強引な即決を断ったユーザーに対して、スタッフの態度が急変することもあるようで、そうした態度への不快感も投稿されています。今日決められないのであれば候補から外してもらって構わないと言われ、見送りもなくすぐに帰らされたといった内容です。」(黒須氏)
 他会場の悪口も今やタブーで、ユーザーにネガティブな印象を与える。ハード面、ソフト面だけでなく、あの会場はもうすぐ潰れると風評の類を言われたという口コミ投稿もあった。
 「営業の場では、比較をしてもらうという意味でも、他会場のことを話す場面もあるかと思います。ただ伝え方によって、ユーザーにネガティブに捉えられてしまいます。ポジティブな投稿として、他の会場を見に行くことを後押ししながら、その際にどういったポイントをチェックすべきか、新郎新婦の立ち場からアドバイスしてくれたというものがあります。比較ポイントを明確にアドバイスしておけば、結果として自会場の優位性がクローズアップされる可能性もあり、何よりユーザーへの尊重を感じさせ印象も大きく変わります。」(黒須氏)
 他会場の悪口を話せば、検討先として数会場を選択したユーザーに、自分たちの判断を否定されたという反発を感じさせる。現在のセールス手法では何よりも共感が重視されるのに対し、根本的に相反する悪手だと言える。一方、他会場を否定するのではなく、自会場を含めた複数の検討先の比較ポイントを提示するという姿勢は、プロの視点でのアドバイスとなり、自分たちの候補選びは間違っていなかったと安心感を与える。引いては、ユーザーに信頼される接客に繋がる。
 「今の新郎新婦の傾向として、強引な接客を受けた場合はその会場を候補から外すという反応が多いようです。ネガティブな投稿を読んでいても、後にその会場に決めたと明言している例は確認されていません。またユーザーインタビューで結婚式場にどんなイメージを持っていましたか?という質問に対し、強引な接客に関する情報を事前に持っていることも分かりました。口コミや知人の体験談から結婚式場の強引な営業に警戒心を持ちつつ、ただ実際に行ってみたら意外とそうではなかったとポジティブに感じた人もいます。きちんと対応している式場が評価されている証でもあります。」(黒須氏)
 ポジティブな評価としては、検討する時間を与えてくれたという内容が多く挙げられている。例えば即決したユーザーに対しても、その場でいいから 2人の時間を設けて話し合うことを提案するなど。逆にプランナーが席を外すとすぐに他のスタッフが入ってきて、2人で話し合う時間を与えないような対応は、営業手法だと見透かされ、ネガティブに振れやすくなる。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、8月1・11日合併号)