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みんなのW×ブライダル産業新聞合同企画 〔連続企画第9回【下見・初期見積もり】〕初期見積もりへの不満【みんなのウェディング レビューアナリスト 黒須裕子氏】

みんなのW×ブライダル産業新聞合同企画 〔連続企画第9回【下見・初期見積もり】〕初期見積もりへの不満【みんなのウェディング レビューアナリスト 黒須裕子氏】

ユーザーからの口コミが会場のCSを測る基準であるならば、どのような視点でチェックしていくべきか。くふうウェディング(東京都中央区)の『みんなのウェディング』と本紙合同でそれぞれのカテゴリーの傾向と分析をまとめていく連載企画。9回目の今回は、【下見・初期見積もり】。単に高い、安いという料金の面だけでなく、費用に対する妥当性や細かな説明などが欠けていることで、ユーザーが不満を抱く実態も浮き彫りになった。

説明次第でコスパに満足感
来館見学した人=下見の投稿では、初期見積もりに対する様々な声が挙がっている。ネガティブな口コミでは、『初期見積もりから金額が確実に上がる』といった指摘も多く、結果的に初期見積もりを”信用しにくいもの”と感じているユーザーも少なくない。上記表は【下見口コミの平均費用評点】と、【下見費用の平均ゲスト単価】の関連図。初期見積もりが安いからといって、全体の評点が上がるわけでもなく、一方で高い場合でも極端に低い点数は少ないということが分かる。
「高単価の場合の高評価としては、細かい説明もあり納得し、むしろコスパが良いなどの投稿が目立ちます。一方で低評価のコメントとしては、細かい説明もあるがその上で予算が高いと感じる、自身のこだわりたいポイントと異なるなど。低単価の場合の高評価でも、説明をちゃんと受け、かつコスパが良いと受け止められています。低評価では、出された見積書が最低価格前提なのでここからいくら上がるかという不安や、即決を求められた等により、ネガティブに振れています。」(プロダクト企画部部長・竹中達郎氏)
結婚式について勉強しているユーザーも増えている状況がゆえに、初期見積もりは『どうせ上がるだろう』と思っている人も多い。中には『初期見積もりを現実的な価格で出して欲しい』と交渉しているケースも。つまりユーザーとしては、高くても現実的なものを求めているのに対し、実際に出てくる見積もりは、何度かやり取りをしたとしても常に何かしら抜けている項目があり、『結局また上がるだろう』と諦めにもなっている。
「『見積もりをください』と言ったのに、出してもらえなかったという口コミも結構あります。ターゲット層ではないと判断して出さないのか、あるいは他の式場も見たいと言った段階で、他式場の見積もりを持ってきたら出すという対応をしているのか。最初から、出したくないというスタンスの式場もあると考えられます。」(レビューアナリスト・黒須裕子氏)
初期見積もりでは、どこまで含まれているのかという説明が不十分なところも課題だ。会場によっては、3 パターン(安く抑える、一般的、希望を全て叶えた場合)を想定して初期見積もりを出しているところもあり、その場合には高評価となっている。ユーザーの知識では見積もりに何が入っていて、何が不足しているかを理解できないため、そのまま契約してしまったものの、必要(希望)なものが含まれていないことを後で知り、結果として100万円、150万円上がり不信感を抱く。
「契約後に必要なものが入っているのかと再計算し、不足していると気づいたときでは、交渉も難しくなります。」(黒須氏) 初期見積もりに関する口コミで話題になる5 項目は、衣裳・料理・装花・動画・持込み料。例えば衣裳については、初期見積もりの範囲内では自らの希望するようなドレスが含まれていないということも多々ある。それならば持ち込もうと思っても、その時に初めて【持込み料】の存在を認識する。【持込み料】と、希望のドレスが含まれている高いプランにアップするかを天秤にかけ、それならば仕方ないと単価アップを決める。結果として、選べるドレスの制限、【持込み料】について始めに詳細な説明を受けていなかったことへの不満が生じ、ネガティブな口コミになっていく。 
「料理や装花に関しては、いくつかのプランがあるため下見段階で具体的なイメージは湧きにくい。だからこそ、初期見積もりの時点で最低価格だけではなく、松竹梅のように複数パターンを提示している式場は誠実に対応していると感じられポジティブに捉えられます。」(黒須)
多くのユーザーは、漠然と持ち込みは可能ではと考えながら、実際に衣裳1 着につき10万円といった具体的な金額までは知らされていない。プチギフトなどの小物についても、持ち込んで節約したいと考えるユーザーは多いが、1 個につき1000円といった持込み料を契約後に初めて聞いて驚くことになる。そこで他の花嫁へのアドバイスとして、『持ち込みが可能か、持込み料はかかるのかを事前にチェックしておいた方が良い』と口コミで書かれることも増える。
初期見積もりの評価ポイントは、【事前説明の充実度】にある。見積書の透明性が高く、どこにお金をかけるべきか・削ってもいいかを2 人の希望に沿って説明・提案している会場は、全体として評価も高い傾向だ。当日成約特典についても、説明をきちんと行った上で提示すると『決め手になった』と喜ばれる一方、それなしに特典を強調するだけでは『即決を迫る材料だ』と批判される。また当日特典は見積もりの明確さが前提にあり、曖昧な見積もりとセットでは逆効果になる。
「自分たちの意見を反映している見積もりかどうかも、評価を大きく左右します。例えば必要ないと伝えていたお色直し代が、知らぬうちに入っているなど。説明もないままに項目が加えられ、結果として高くなっていることに対して不信感を抱いたという書き込みも見られます。高い見積もりについては、説明があるかないかで印象は大きく異なると感じます。またユーザーにとっては、自分たちの話をどこまできちんと聞いてくれているかの安心感に繋がります。『不要と伝えたのに入っている』、『必要と伝えたものが入っていない』という見積もりは不満になるのも当然で、これはプランナーの力量による部分も大きいでしょう。」(黒須氏)

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、9月11日号)