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【TOPインタビュー】台風上陸時の決断(エスクリ 代表取締役社長 渋谷守浩氏)

【TOPインタビュー】台風上陸時の決断(エスクリ 代表取締役社長 渋谷守浩氏)

 エスクリ(東京都港区)の代表取締役社長就任から3年が経過した渋谷守浩氏。働き方改革が加速する流れに、上場企業としてしっかりと対応していくことが重要と語る。さらに、エスクリという社名に込められた、「人をクリエイトする」という原点に今こそ立ち返るべきとの考えから、人事施策を次々に整備している。渋谷氏が始めた副店長制度も定着し、20代の人材が公募に名乗り出るなど、従業員全体のモチベーションも高まっている。今回のインタビューでは、人にクローズアップした経営スタンスに迫っていく。

――昨年の台風時、いち早く結婚式の延期をした対応が、業界内でも話題を呼びました。
渋谷「経営的な損失という観点で考えると、当社にとって、今までなかなかできなかった決断だったと言えるでしょう。良いか悪いかの考えは人によってあると思うのですが、私の判断で、その日は休みにしようと。当然億単位の損失になりますが、そうは言っても仮に事故でも起これば、さらに大きな損害になるわけです。私が決断しなければ、顧客はどんなに危険でも来なくてはならない。社員もパートナー企業の従業員も出勤しなければならないわけです。猛烈な台風が上陸している最中に出勤し、万が一でも顧客や社員に何かあったらどうなるか。結婚式延期によって誰かが痛みを伴うのであれば、その損失は我が社が負いましょうと。その決断をしなかった会場も多かったわけですが、私たちは延期によってお金は失いましたが、その分の信用は得られたはずです。」
――危機管理に対する決断のスピードも早かったですね。
渋谷「遠方からゲストを呼んでいる可能性も考慮すれば、早く決断しないと地方から出発してしまいます。航空券などの払い戻しの無駄も考え、すでに木曜日の午前には決断していました。社内からも、こんなに早く決めていいのですかという声はありましたが、私からすれば半日伸ばして何が変わるのかと。従業員にもパートナー企業のスタッフにも、家にいて台風の備えをしなさいと伝えました。同業者の中に、あのエスクリが決めたのだから、自分たちも中止にしようと考えた会社もあったのではないでしょうか。」
渋谷「危機管理の決断は、スピード以外の何物でもありません。仮にそれが結果として失敗であっても、いい失敗と言えます。もちろん経営者として、損になる決断は怖いわけですが、今回は捨てるべきお金だと。恐らく経営経験が浅かったら、この決断はできなかったでしょう。中止にしたことで、売上だけでなく集客も無駄になったわけですから。集客コストを考えたときに、来館予約を一気に失うことを計算してみると、この決断はなかなかできるものではありません。決断をした木曜日には、本当によかったのかなとも思いましたが、経営者である私にしかできないことであり後悔はしていません。」 
――台風の件もそうですが、従業員ファーストの意識が高まっている印象です。
渋谷「そもそもエスクリの社名の由来が、スタッフをクリエイトする。創業者がそこを目指していたわけです。二代目となる私が、この部分をきちんと対応していこうと。だからこそ、スタッフを守りながらも、最前線に立たせる。当社はスタッフが売りの会社ですよと。創業時の原点に戻って、創業者の思いを全社員が再確認するためにも、私の代でその思いを引き継いでいくという考えです。何か新しいことをしていくことも大切ですが、今こそ原点に戻って。そもそも絶対に忘れてはいけないことですから。」 
――働き方改革への取り組みも積極的です。
渋谷「人事部長が日々新しいことを考えてくれています。例えばホテルミラコスタで内定式をやる、託児所を開設するなど。働き方改革は、刑事罰が与えられるということもありますし、経営者としては即座に対応していかなければなりません。苦しい部分もありますが、その流れについていかなければ企業としてやってはいけない。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、新春特大号)