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《注目の新サポートが登場》課題分析+接客力向上【トルチュリール 代表取締役 玉井 美輪氏/くふうウェディング(みんなのウェディング)代表取締役社長 貝瀬 雄一氏】
【みんなのウェディング】を運営するくふうウェディング(東京都中央区)と、年120件以上の接客トレーニングを展開するトルチュリール(川崎市川崎区)は6月、業務提携によりブライダル向けの新たなサポートプログラムを発表した。ユーザーの本音を知れる口コミは、会場にとっても貴重な財産。それをデータとして活用しながら、評価に大きく繋がる接客力を高めていく。業績アップにも貢献する取り組みを、貝瀬雄一社長、玉井美輪社長が語り合った。
顧客のリアルな声の価値
――口コミ投稿の点数・内容を指標としながら、根源的な課題でもあるコミュニケーションのスキルアップに活かしていくサポートプログラムをスタートしました。その内容とは。
貝瀬「新郎新婦、ゲストからの真摯な声である口コミを分析し、会場の課題を導き出していきます。その課題に対し、接客トレーニングのプロフェッショナルでもある玉井さんに、改善を実現するシラバスを完全オーダーメイドで作成してもらい、一年間かけて教育を提供していくという流れになっています。一般的な集客、接客コンサルとの違いは、様々なノウハウをそのままインストールするのではなく、まずは会場の置かれている立ち位置を明確化。テクニック以上に大切な基礎的部分である、接客コミュニケーション面のパフォーマンスを高めることに注力している点です。」
玉井「接客力向上でパフォーマンスが高まれば、最終的には成約率・単価アップに繋がります。さらに口コミを指標とする以上、顧客満足度の高い投稿に繋がることになり、結果として集客にも結びついていきます。」
――口コミは会場にとっても重要な指標で、分析も含めてデータを提供していく形です。
貝瀬「みんなのウェディングの口コミは大きな資産だと感じています。式場の費用明細の投稿が集まってきて、下見の見積もりから最終見積もりまでの費用ギャップをしっかり確認できる。さらに接客、費用、設備、料理、演出など、細かい軸で情報を蓄積していることも価値だと考えています。これまでも投稿内容を精査し、こんな口コミがあったからと営業を通じて会場にアドバイスするなどの対応を自主的に行っていました。会場側としても、投稿内容のフィードバックによりモチベーション向上、改善に動くという対策を取れるわけです。今回、玉井さんとのコラボにより、改善を含めたプロジェクトとして形に出来たのは非常に嬉しいことで、我々の口コミの価値をさらに活かせると考えています。」
玉井「実際に、ブライダルの現場では、みんなのウェディングの口コミを非常に参考にしています。社内の定例ミーティングなどで、こう書かれていたと共有することもあり、それを基にキチンと取り組もうという現場の動きもあります。会場として頼りにしているデータを使って分析し、オリジナルのトレーニングを提供することで、CSはもちろん、スタッフのモチベーションも確実に上がり、様々なメリットに繋がります。」
貝瀬「接客の場面でも、口コミの生の情報そのものを顧客に伝えることの意味は高まっています。会社発信のPR以上に、同じ立場であるユーザーの声を重視する時代。『実際に使った人がこう言っている』というのは、売り手が主張するよりも説得力はあり、それを新規・打合せでも活用できます。」
――みんなのウェディングの口コミを見ていると、その多くは接客、コミュニケーション面に紐づいていると感じます。プランナー、サービス、フローリストやドレススタイリストといったパートナー。それぞれの接客が良ければ大きく評価され、何かしらの問題があるとネガティブな投稿になります。
貝瀬「接客力が評価を左右するというのは、データとしても立証されています。特にその傾向はコロナ明けの方が強く出ている面もあり、良いサービスを提供できればダイレクトに成約率などの成果に紐づいていくでしょう。その点では、玉井さんの接客改善のトレーニングと一体化することで、前向きに満足度を高める力にしていきます。」
話法以上に人づくり重視
――玉井さんは業界問わず、多くの企業向けに接客コミュニケーション向上のサポートを手がけています。最近の口コミを見ると手厳しいコメントも多く投稿されていて、ユーザーの求める期待に、接客力がついていってない印象を持ちます。この分野の第一人者として、現状をどう見ますか。
玉井「ブライダルでは、たった一人の対応が悪いだけで全体的な評価は下がってしまいます。その一人が先輩だった場合、後から入ってきた若いスタッフも見よう見まねでやり方を覚えてしまい、全体に課題は広がっていきます。接客力はスキルも大事な一方、その根底には顧客をどう感じ、どう大事にするかという姿勢があります。さらにそれを表現する方法を知っているか。顧客がどうしたいのかを捉える力と、どう伝えていくかが不足していれば、評判も落ちてしまいます。」
貝瀬「接客力とは、個々のスキルを高める訓練だけでなく、会場の文化づくりでもあると思います。顧客のためにという思いから、自然に出る行動や言葉。それが先輩から後輩に伝承され、文化として形成されていくというイメージですね。」
玉井「そこはすごく大切だと感じます。文化がキチンと確立されている会場であれば、新人であっても自然に顧客のためにという想いや行動は育まれていき、そこに共感しているため離職も防げます。逆の場合は、性格の良い人はどんどん辞めていってしまいます。」
貝瀬「今回重要なのは、プランナー組織に対して文化をしっかりと埋め込んでいくことですね。実際に、接客レベルが高くなれば生産性は上がる。コンプレリスクも無くなって、その対応に多くの時間をかける必要もありませんから。そういった視点も重要です。」
玉井「中途半端なホスピタリティで接していくと、ユーザーもその分期待をします。ところが期待した分だけ応えてもらえなければ、すぐにコンプレとなってしまう。今回のプロジェクトによって生産性も上がり、さらにスタッフ同士もモチベーション高く仕事ができるようになります。社内の雰囲気も良くなれば、【ホウレンソウ(報告・連絡・相談)】は円滑となり、情報共有のミス防止に繋がります。」
――実際に玉井さんの研修を受けた会場で、成約率がアップしたという事例も増えています。テクニックを教えなくても、それは充分に可能です。
玉井「どれだけトークを重ねても、大前提として目の前の2人に受け止めてもらえる状態でなければ何も届きません。そのためには親近感を持ってもらうことが必要で、私はその部分を徹底的にトレーニングします。話法以上に、親近感やこの人と一緒ならと思ってもらえる人づくりを重視しています。」
貝瀬「新規接客は、提案よりも共感が重要になってきていますし、2 人の想いを引き出すためには、第一印象を含めて基本的な部分は見過ごせません。営業スクリプトも大切ですが、共感力とのバランスをどうとっていくかでしょう。」
玉井「それをできるようになるには、顧客の言葉の奥をいかに感じていくかの感じる力、捉え方がポイントになります。実際にプランナーは、基本的に快活ですし、社交的で魅力的な人も多い。ただコミュニケーションの取り方を間違えてしまっていることも見受けられ、仲良くなったと勘違いして、気軽に『今日、決めてもらえますか』などと言ってしまい口コミに悪く書かれるようなケースもあります。相手が何を感じているかを踏まえての距離感の取り方、相手から質問されたことにきちんと回答できているか、自分の信頼をどう積み上げているかといった、単に仲良くなるというコミュニケーション以外の部分を、学んでおくことは大切です。」
貝瀬「当社ではエニマリというプロデュース事業も抱えています。会場と同じように現場運営の立場から感じるのは、プランナー教育に行き詰まっていることも多いのではと。もう一段階成約を伸ばしたいといった越えたい壁はあるけれど、自分たちだけではやりきってしまっていて限界も感じている。必要なのはブレイクスルーの機会で、そのきっかけを求めています。そこに今回のプログラムが活きてくるはずです。」
玉井「経営者や上層部は接客の重要性を理解していても、現場までその認識が行き届いていない。また現場は忙しさで精一杯で、基本的な接客に気を配る余裕さえないという状況もあります。そこを今一度、根本のところから意識を共有していければ、もっと良くなるはずです。」
――今回のプロジェクトは、ブライダル業界全体に与える影響も大きいかと考えられます。
貝瀬「今はインスタや様々な媒体を通じて、ユーザーが取捨選択をできる時代になっています。選べる立場になってきたために、その目も厳しくなっている。だからこそ、サービスレベルを上げていく必要性が高まっています。結局のところ、【サービスレベルを上げた会社が勝つ】という構造は変わらないでしょうし、今回のプロジェクトを通じて、業界全体のサービスレベルを上げていくための一助となれば嬉しいです。」
玉井「プランナーがすぐに辞めてしまう現場もあり、悩んでいる姿も見てきました。大切なのは、誰もが楽しく、生き生きと働ける環境であり、それは結果的にユーザーへの貢献にも繋がるはずです。そういう業界を作っていくために、少しでも役に立てたらと思っています。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、6月1日号)