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《地方ブライダル企業の地域密着戦略》新たなパーティースタイル提案【ザ マグリット 代表取締役社長 羽原俊秀氏】
厳しい地方マーケットの影響を受け、結婚式施行組数がコロナ前の半分にまで停滞しているというザ マグリット(岡山市北区)。空いたバンケットを稼働するために、地元の様々な宴会を獲得し、さらに自社イベントも次々に打ち出している。葬儀マーケットへの参入も計画する羽原俊秀社長が、8年ぶりの渡米で描いた今後のビジネス展開を語る。
著名プランナーとのネットワーク活用
――今年の2 月、コロナ前以来となるアメリカNYに行ってきたそうですね。
羽原「NYで開催されるブライダルエキスポに合わせて、8 年ぶりに渡米しました。それ以前は毎年訪れていましたから、本当に久しぶりです。世界的にも有名なプランナー、マシュー・ロビンズ、マーシー・ブルームにも会うことができました。このクラスになると、ビル・ゲイツの娘さんの結婚式といったセレブを相手にしていて、費用は最低でも4000万円、サプライズゲストとしてエルトン・ジョンを招くなどとにかく豪華なプランニングをしています。一切花を使わず、3 ヵ月かけてガラスのテントの会場を作ったという事例も聞きました。セレブ層の結婚式は、コロナ前とも変わっていないようです。」
――マーシー・ブルームとは、今後連携しての展開も提案しているそうですね。
羽原「これまで当社としても、アメリカの著名なプランナーを招いた研修や模擬披露宴などを開催していました。その中でもマーシーへの依頼が最も多くて、合計7 回招聘しています。一番初めはそれこそ電話しかない時代でしたから、何かイベントを開催するにしても事前調整だけで非常に苦労したものです。特に一番困るのは色の指定で、電話ではなかなか伝わらない(笑)。今はズームもありそこは簡単に確認できますので、ズームを使った勉強会、情報交換などの機会を設けたいと提案しています。」
羽原「例えば当社が日本の窓口になって、マーシーに依頼したいという日本のカップルのサポートをしていく。日本人でもアメリカのウエディングプランナーにプランニングをお願いしたいというニーズは考えられますし、実際に打合せをして彼女が動いて対応するパターンもそうですが、日本のプランナーにアドバイスだけをしていくことも考えられます。何か新しい流れを起こしたいですね。このビジネスについては、日本だけでなくアジア圏内にも繋げていけると思っています。実際のプランニングだけでなく、アメリカのスタイルを学ぶ勉強の機会も提供できるかと。と言うのもマーシーはアラブの仕事、ヨーロッパの仕事も手掛けていて、東南アジアを中心にアジア圏でも富裕層向けの展開は考えられます。」
――ザ マグリットとしては、今後はパーティー需要の獲得を強化していくようですね。
羽原「昨年、宴会・パーティーは550件獲得していて、今年は700件を予定しています。フォトウエディングに対応するスタジオLUXEを展開しているものの、結婚式はコロナ前の半分以下になっています。稼働率という観点でも、ウエディングだけでなく法人宴会や人生催事に関連したパーティーなど、とにかく数多く使ってもらうことを考えていく必要があります。実は先日、地元の経営者の集まる会で、参加企業に新しいパーティースタイルを紹介する機会がありました。100人以上来る会合で、普通であればゲストの話を聞いて、そこから懇親会という流れです。その時には、まずカクテルパーティーからスタート。主催者に蝶ネクタイをしてもらい、おもてなしの役を任せ、来場する会員一人ひとりをお迎えしました。1 時間私が話をして、その後メインパーティーに。このスタイルを体験してもらい、企業の内定式での開催を提案しました。」
――なぜ、内定式なのですか。
羽原「実は内定式の後の懇親会に出席したことで、内定辞退に繋がるケースが増えるという話を聞きました。社長や役員が主賓のようにメインテーブルにドンと座っていて、社員はそれに気を使っている。【いかにも】の光景を見て、思っていた雰囲気とは違うと考える学生が多いようです。だとしたら、主催者でもある社長、役員に蝶ネクタイを付けてもらって、1 人ひとり出迎えおもてなしすればいい。そうした提案が出来るのは、我々ブライダル業界の最も得意とするところ。パーティーは出会いの場であり、コミュニケーションを取る仕掛けは大切です。様々な人が集まって話しやすい雰囲気を作っていく、出会う演出をしていければ、満足度も高まり結果として宴会・パーティー受注は増えていきます。」
――形式に捉われている堅苦しい宴会は、今の若い人は敬遠するでしょうからね。
羽原「近隣に中国銀行の本店があり、年間60回は使ってくれていますから、形式を大切にした宴会にも対応はできます(笑)。ただそれだけではなく、様々な希望に柔軟に応えなければなりません。9 月には地元の経営者の依頼で、ディスコパーティーを開催します。これまでは自社の倉庫で開催していたようですが、それならば結婚式場でと提案しました。人数は350名です。また平日の昼には女性向けの会合としてセミナーとパーティーを開催していますが、そこでも様々なパターンを作っています。要望によってコーディネートもこまめに変えていて、例えばバラの好きなドクターの奥さんが主役の会では、花びらでレッドカーペットを作り、赤いライトの照明で演出。一回提供すると他では出来ないからと、その後も当社を選んでくれますし、小さな異業種交流会でもちょっとした工夫は大切です。」
――地方ブライダル企業が厳しい中で、様々な展開を仕掛けることで人を集めていく対応は大切ですね。
羽原「地方で結婚式場を展開していた知人の女性経営者に聞いたのですが、その会社はウエディングから葬儀会場に業態転換し、現在は地域一番店になっているそうです。ウエディングを経験している人が葬儀を担当すると、そのホスピタリティで大きく差別化ができると。女性スタッフも多いため、気配りの声掛けもソフトに伝わり、また厨房設備も整っているので冷たいお弁当ではなく、出来立ての料理を提供できる。ご遺体への対応は今では下請に任せるため、そうしたノウハウよりも、ご家族に寄りそうおもてなし部分が重要とのことでした。最近はローストビーフなどの肉料理も出ていて、つまりウエディングで培った料理、味も生きてくるわけです。そこで当社でも葬儀のプロデュースの会社を立ち上げました。会社はもともと【石山花壇】という旅館からスタートしているので、その名前を使って葬儀会館を作るために物件も確保。厳しい地方の環境だからこそ、ブライダルだけではない新たな市場を作り挑戦していくことが必要でしょう。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月1日号)