LISTEN to KEYMAN
キーマンに聞く

〈全国B.M.C.合同企画〉:ホテル宴会サービスのProfessional Mind:先輩がマンツーマンで教育【北海道B.M.C.会長 京王プラザホテル札幌 宴会料飲部統括支配人兼宴会サービス支配人 木田 幸光氏】
1990年に京王プラザホテル札幌に入社し、13年間宴会サービスを担当。その後宴会セールス、3年間東京の新宿で経験を積み、札幌に戻り宿泊部、宿泊セールスを経て、2023年7月に宴会サービスの責任者として19年ぶりに宴会サービスに復帰した京王プラザホテル札幌(札幌市中央区)の木田幸光統括支配人。スタッフ教育で実践しているのが、若手に先輩社員を一人固定で付け、マンツーマンでアドバイスしていく仕組みだ。木田氏自身の新入社員時代に付いてくれた、1期生の先輩社員の存在が原点にある。
先輩からの教え【宴会サービスは最後の砦】
中学生の時に見たテレビの影響で、ホテルマンへの憧れを抱いた木田氏。高校生になり、北海道の地元のホテルで結婚式を担当するアルバイトを2 年間経験したことから、宴会サービスの魅力を感じ、宴会部門への配属希望で京王プラザホテルに入社した。
「京王プラザホテル札幌は、800名入る大型宴会場も有している北海道でも有数の規模で、田舎のホテルとは全く違って初めは圧倒されました(笑)。結婚式、法要、歓送迎会、社葬など多種多様な宴会があるなかで、2 年間は新しいことを学ぶ日々でした。」
入社1 年目の時に、合計650名で7 日間連続の企業宴会が入った。スタッフは神前式場に40枚の布団を並べて、泊まり込みで対応。朝食からディナー、片付けまで、朝6 時から夜中の12時まで7 日間連続での厳しいものだった。
「今では考えられない時代です。それを経験したときには、辛くて会社を辞めようかとも思いました(苦笑)。」 厳しい仕事を経験する一方、宴会サービスの仕事にやりがいを感じることも多かった。新入社員の木田氏に付いてくれた、ホテル1 期生の先輩からよく言われていたのは、【宴会サービスは最後の砦】。セールスがいて、予約打合せをして、当日接客するにあたり、どこか途中でミスがあったとしても宴会サービスで挽回できるからそういう意識を持って仕事をしなさいという言葉だった。
「全部が全部同じ接客ではなくて、顧客一人ひとりに合わせた臨機応変な対応は一番大事だと学びました。流れや進行はある程度決まっていても、幹事の性格はそれぞれ異なります。細かい幹事もいれば、大雑把な人もいますから、それも踏まえて常に先読みしたサービスが必要。例えば主賓の中にホテルの常連のゲストがいたとします。いつも決まって飲んでいるドリンクを仮に幹事から指定されていなくても、急遽依頼されることを先読みして事前に用意しておく。ワイングラスも、通常の宴会で出すものではなく、大きめのグラスを準備するなど。顧客のことを知る経験と共に、過去の業務報告書を見返して、どういう動きがあった、要望があったということも、次回に活かしていきました。」
宴会サービスの仕事に自信がついてきたのは、10年程経験し結婚式の担当キャプテンを務めるようになってから。先輩も数多くいる中で、キャプテン=黒服を着られるようになった。
サービス技量を高めようと、日本ホテルレストランサービス技能協会の国家資格である1 級も取得した。ところがその翌年、宴会セールスへの配属を命じられる。それまでのセールス部門は、現場をそれほど経験していない大卒社員中心だったが、現場を経験した人材を配属する方針に変化したタイミングだった。
「現場を経験していたことで、例えばテーブルプランに関しても、これはどうですかといった提案型のセールスができるのは強みでした。また宴会サービスのテーマにある会場の効率的な使用を意識し、例えばスクールが入れば翌日も同じようなものを入れる。ステージ設営は大変だからこそ、それほど変えずに済むように前後を合わせて調整し、現場サービスの仕事を効率的に対応できるような営業も大切にしました。」
その後、東京の京王プラザホテルに3 年間出向、札幌に戻り宿泊部門等も経験後、2 年前に宴会サービスの統括に就任。社員14人、配膳、アルバイトを含め、100人を超えるスタッフのマネジメントをする立場になった。宴会サービスを志す若手も減少している状況で、定着のために実践しているのが、先輩を一人固定して付け教育していく仕組みだ。密なコミュニケーションを全員に意識させると共に、木田氏自身の経験にもよる。前述した、木田氏に付いてくれたホテル1 期生の先輩。年齢は9 歳上で、当時いた4 人の1 期生のうち最も立ち振る舞いが素敵だと感じていた。
「私の若い時、連続で遅刻をしてしまったことがありました。ある日、結婚式が10件入っていた全会場フルの日に遅刻をしたところ、『今日はエスカレーターの前でアテンドだけをしていなさい』と言われ、1 日中そこに立たされました。仕事終わりに言われたのは、『普段、どれだけ一生懸命仕事をしていても、1 回のミスで全ての信用を失ってしまう。信用を取り戻すには何倍も努力して、それでようやく信頼に繋がる』と。その出来事から、仕事に対する姿勢が変わったというのは正直あります。先輩がいなければ辞めていたかもしれないと思うほど、憧れであり、道を示してくれた尊敬する存在です。その先輩は、現在60歳を過ぎ定年退職となったものの、現場のシニアアドバイザーとして残ってくれています。今でもその立ち振る舞いは、スタッフたちの大切な手本であり、また一緒に仕事をできることはすごく嬉しい。今の若いスタッフたちにも先輩を1 人ずつ付けることで、先輩社員には『尊敬される存在』になってほしいという思いもあります。」
宴会サービスの現場では、指導していく過程で口調が強くなってしまうことも多々出てくる。それを新入社員はどう感じたかを面談で確認し、仮に言い方がきつかったという印象を受けていれば、注意したスタッフとも面談して言い方に注意を払うようにアドバイスもしている。新入社員と一緒に宴会を担当することは少ない立場だからこそ、アンテナを立てて常に情報を収集し、些細なことでも面談で対応していくことを大切にしている。
「1 年前からは、支配人や支配人代理ではなく、マネージャークラスが会社を引っ張っていくという意識付けもスタートしています。負担にならない形で、これまで支配人クラスのやってきた仕事をマネージャーに下ろしていく。会社の損益を見ながら年間予算との兼ね合いも考慮して機材購入を決めるなど、数字の管理を経験させています。プレーヤーとしての経験値だけでなく、マネジメント的な発想や知識も身に付けさせる方針です。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、5月11日号)