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キーマンに聞く

連載7≪ヒト売り時代のセールス講座≫感情を先回りするビデオグラファーの価値を語る【VIVACE st 代表 衣川 雅代氏】
よく相談を受けるのが、写真は安定的に受注の入る一方で、映像商品の販売は依然として課題も多いという話です。特に記録映像は「後で見ない」、「友人がスマホで撮ってくれる」といった理由で敬遠され、受注の伸び悩む会場も少なくありません。
実際に現場を振り返ると、映像の価値は結婚式直後よりも数年後にこそ発揮されます。祝辞や友人の言葉を、当日には緊張でよく覚えていなくても、後から見返すことで感謝を伝えるきっかけになります。また、20代で挙げた結婚式を30代、40代になって見返すと、当時は理解しきれなかった祝福の言葉の重みを実感できます。記録映像は「今」ではなく、「未来」に意味を持つ財産です。
また写真と映像の大きな違いは、「音」にあります。拍手、笑い声、選んだ音楽など。その一つひとつが、時間を超えて記憶を蘇らせていきます。両親への手紙や友人のスピーチは、その瞬間を逃せば二度と取り戻せません。だからこそプランナーは「映像を売る責任」を強く自覚する必要があります。想い出を残す責任感を持つことによって、提案の姿勢も変わってくるはずです。
それを考えれば、機能的価値を語るだけでは販売できない時代とも言えます。重要なのは、そこから生まれる情緒的価値をどう伝えるか。例えば家族や親友が家に来た時に、彼らの映っている場面や見逃したシーンを後から見返すことで幸せを再体験できます。将来子どもに、「どんな愛情のもとに生まれたのか」を伝える手段にもなる。つまりプランナーは、みんな頼んでいますよといった営業トークではなく、この瞬間を残さなくてどうするのかと人生に寄り添う視点で提案すべきでしょう。
この映像の価値を支えるのは、ビデオグラファーの存在。進行を頭に叩き込み、わずか0.5秒先の感情を先回りして撮影しています。サプライズで祖母の登場する場面ならば、先回りして祖母をカメラに収めている。こうした瞬間を逃さない技術と洞察力は、結婚式撮影のプロでなければ到底真似できません。さらに機材選択、編集スキル、音楽理解まで求められ、歌詞の意味を理解し映像とシンクロさせていくような表現力はまさに総合芸術です。
プランナー研修で新人に撮影体験をさせると、その難しさに驚きます。光のコントロールや臨場感の表現、感情の先読み。これらを肌で感じることで、映像商品の提案力は確実に変わります。それを考慮すれば、スマホで十分、友人が撮ってくれるという認識は甘いもので、単なる「記録」ではなく、「物語」として残すもの。プランナーはその価値を理解し、責任を持って提案するべきなのです。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、10月1日号)

