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キーマンに聞く

ファンを獲得する文化【Daiyu 代表取締役 宮腰 真里氏】
SNSなどを活用した自社集客戦略とリピーター獲得によって、年間200組超を施行している人気会場萬屋本店(神奈川県鎌倉市)を経営するDaiyuの宮腰真里社長インタビューの後編。同会場はレストランも運営しているが、新郎新婦、ゲストの【帰ってこられる場所】として重要な位置づけになっている。サービス業の本質を追求しながら、企業文化を根付かせていく重要性とは。ファン作りを何よりも大切にしてきた宮腰氏の考えを追った。
半数以上が以前から接点
――(前号からつづく)自分たちと【両想い】になれるような新郎新婦を探すという考え方によって、独自の集客方法を確立してきました。
宮腰「当会場の集客割合は、SNS経由が50%に対し、レストラン利用からの集客が30%、新郎新婦の紹介や参列経験のあるゲストといったリピーター型は20%です。つまり、半数以上がそれ以前から何らかの接点を持っていたか、強い推薦・紹介による来館です。その他には新卒採用に応募してきた人が、数年後に結婚式を挙げに戻ってくるケースも多いです。入社にはならなかったものの、スタッフ、会場が好きという気持ちを持ち続けてくれていて、それこそ10年前に新卒としてエントリーした人の結婚式を手掛けたこともあります。そうした人たちは、他社に就職後もインスタやフェイスブックで私たちの活動を見ていて、共感を持ち続けてくれています。当社のファミリーになりたいという思いで戻ってきてくれるのは、私たちにとって当たり前の流れになっています。」
――就活でもファンを獲得しているということですね。
宮腰「例えばインターン生との関わりについても、かなり深く量も多いでしょう。当社では合う・合わないではなく、その人の人生にとって何かの価値やきっかけになればという想いを持っています。選ぶ側・選ばれる側という関係性以上に、縁のあった人を変えて帰したいと。若い学生にとって、親以外の大人と関わるという新しい体験は強烈な印象となり、その結果、もっと知りたいという気持ちからファンになってくれています。ファンを作るという意識が、スタッフ全体に根付いているのも大きいでしょう。もともとプロデュース業をしていた頃は、広告なども出せませんから、とにかく参列してくれた人、関わりを持った人たちをどう次の成約に導くかが全てでした。ファンにすることに全力を尽くしていたわけで、そのマインドは企業文化として根付いています。」
宮腰「新郎新婦はもちろん、列席したことをきっかけに再びレストランに訪れる人も多くいますし、結婚式の見学に来てそのまま成約をしてくれる。その理由を聞いてみると、演出や雰囲気、装花、ドレス、アイテムなどを細かく覚えていて、非常に印象的だったと。他にはない、今まで出席した式と違っていたと言ってもらえます。もう一つ大事なのは、プランナーの定着。再訪した時に、以前に関わったプランナーが在籍していることで、はじめて戻ってこられる場所となります。」
――その点では、レストラン運営は重要な位置づけです。
宮腰「お金をどう生むかではなく、帰ってこられる場所をつくること。その安心感や信頼が誰かの紹介につながり、新たなご縁となる。そうした循環こそ、私たちの本質的に目指すべき形です。結婚式を挙げたOBやOGが戻ってきた際には、スタッフ全員で『おかえりなさい』と声をかけることを重視してきて、現在ではスタンダードになっています。『おかえりなさい』という一言で、ここは自分の場所だと感じてもらえる。その言葉で特別感が生まれ、新しく来ている顧客にも“特別な体験”として伝わります。そうした声かけひとつで、誰が来たのかスタッフ全員がすぐ分かりますから。」
誰にでも伝わる明確な理念
――サービス業にとって本質的な部分でもあります。顧客管理を重視し、システムを活用する会場も増えています。
宮腰「サプライズや派手な演出ではなく、会話や記憶の積み重ねこそ顧客にとっての価値になります。前回はこうだった、今回はこうするといった会話を当たり前にしていく。ただそれをシステムに頼ろうとは思っていません。システムで確認するよりも、スタッフ一人ひとりが覚えることそのものに価値はあり、その記憶を周囲が評価してくれれば本人の自己肯定感も高まっていきます。その点では、覚えていないと周囲から注意を受けますし、このような繰り返しで企業文化は育ってきました。そもそも私たちの場合は10年で約2000組ですから、覚えられるはずです(笑)。もちろんそこに愛情を持つことに意味があって、単に名前を呼べれば良いのではなく、たった一言でも記憶に基づく気遣いを出せるかどうかこそ大切。それはサービス業の本質を大切にしているだけで、非常にシンプルで何も難しいことではありません。」
――スタッフの定着率が高いのも、シンプルながら、本当に大切な部分を追求している企業文化によるのかもしれません。
宮腰「経営者として、自社のコンセプトや理念を明確にし、それを働くスタッフに共有できる形で示すこと。さらに実直に実行し続けることが大切だと考えています。例えば【100年のブライダルカンパニーを目指す】といった抽象的なビジョンより、【帰ってこられる場所をつくる】という、誰にでも伝わる言葉で十分かと。顧客にも伝わりやすく、スタッフにも浸透しますから。そのキーワードを、ブレずに繰り返し伝えていけば、自然と文化は育っていくでしょう。そこに矛盾が生まれると、人は迷い、定着もしなくなる。ただシンプルに、わかりやすく、実直に続けていけば、感動を生み出すチームとなっていきます。表面的なノウハウは真似できたとしても、それを作り出している心は簡単には真似できない。そこが私たちの“勝負している場所”でもあります。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、8月21日号)

