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《新春 Top Interview》安定感を約束する責任と覚悟が必要【東京會舘 常務取締役 星野 昌宏氏】
来期は平均単価アップから、組数増の方針を掲げている東京會舘(東京都千代田区)の常務取締役・星野昌宏氏。それを支えるのが料理、サービス、商品、オペレーションなど一つひとつのクオリティにある。当日の現場を何よりも重視し、安定感ある結婚式を提供するために、些細な問題も見逃さずに都度、徹底的な改善を進めている。その積み重ねが、クオリティに繋がっている。プランナーの役割を含め、結婚式に対応する責任と覚悟とは。(後編)
2テーブル3人を維持
――料理だけでなく、サービスの評価も高いわけですが、クオリティ維持のためにどのような対応をしていますか。
星野「サービス社員は30人在籍。さらにアシスタントと同列の配膳会の常備が8 人ほどいて、現場は配膳スタッフで対応しています。宴会、婚礼共に現場の状況は総支配人がくまなくチェックをし、配膳会社側もなるべくスキルの高い同じスタッフを入れてくれていると感じます。昨年、配膳会への支払い時給も100円強上げました。もう一つ、結婚式だけでなく宴会も好調なため、土日平日問わずに途切れなく仕事を依頼。配膳会社からの信頼は、時給額以外に仕事をどれだけ安定的に出せるかにも関わってきますから、そうした面でもオンハンドを持っていることは重要です。」
星野「最近はテーブル担当の人数を減らしている会場も多いそうですが、当社は2 テーブルに3 人を維持しています。出す人、下げる人、ドリンクのオーダーを受ける人を2 テーブルに1 人ずつというスタイルは、絶対に崩してはいけない部分。この安定感の結果、サービスが素晴らしかった、ドリンクのオーダーも待たされることなくスムーズだった、気配りが行き届いていたという評判を獲得でき、次に繋がっていきます。」
――結婚式は最上級のサービスと標ぼうしながら、人手不足から基本的なこともままならない会場も出てきています。
星野「宴会でも結婚式でも、ドリンクを待たされたくないのは当然、シルバーは常に磨き上げた綺麗な状態でなければならない。トイレに行って戻ってくれば、新しいナプキンが置いてある。そうした当たり前を徹底していく方が、感動、最上級などの美辞麗句を並べるよりも大事だと思っています。サービスの人数が少なくなれば当たり前のことも出来なくなり、出席した人たちからの評判も一気に落ちていきます。出席者の求めていることは、必ずしもスペシャルなことではなく、安定的に美味しい料理ときちんとしたサービスであって、気持ちのいい空間を過ごせること。人手不足の今、その当たり前を出来るところと出来なくなるところで差は広がってくるのでしょう。」
――その点では、集客や営業以上に、当日のクオリティ向上が重要になってくるのかと。
星野「成約率の高い人を必要以上にもてはやし、単価アップなど数字でしか評価しないマネジメントよりも、当日がどうだったかという部分にもっとスポットを当てなければならないはずです。結婚式の場合、顧客とたくさんの約束をしています。例えば私の担当した結婚式で、プロポーズのアフターブーケを家に帰って確認すると壊れていたという連絡がありました。もしかしたら持ち帰る途中に破損したかもしれないとはいえ、約束していた商品ではなかったという事実があります。どちらが悪い悪くないはどうでもよくて、大事なのは顧客がどう思っているか。社長もよく言う話で、東京會舘に期待をしていたことが顧客視点で解決できていないとすれば、それは東京會舘のクオリティではないと。だからこそ東京會舘としてできる精一杯の対応をするわけです。当日に目を向ければ細かい部分を含めて多くの課題が見え、それを一つひとつ丁寧に対応していくことを重視しています。」
――結婚式に対応する責任と、覚悟ですね。
星野「100の期待値が、120、130になって初めて、顧客はまた戻ってきてくれます。例えばサービス業では逃れられない粗相として、ドリンクを服にこぼしてしまった場合。和装であれば濡れると歩くのも大変で、しかもシミなどの付いたまま帰れば、人目も気になり惨めな思いを抱くわけです。その人の気持ちを慮った時、果たしてクリーニング代金を弁償しますということだけでいいのか。帰りの道中に人目を気にしないで済むよう、自宅まで送りのハイヤーを手配し、その場合の経費もあらかじめ設けています。そこまで顧客の気持ちに寄り添い気配りの対応をするからこそ、仮に粗相があっても結果として評判を得られます。信頼を獲得するためにお金を使えるかどうかは、大切な分かれ目でしょう。」
プランナーの責任意識
――ミスに対して、責任逃れをしてはならないと。
星野「この仕事に携わる絶対の条件として、プランナーは全てにおいて責任を負わなければいけないはずです。いわばプランナーは結婚式のプロデューサー。司会やカメラマンに依頼するのは舞台の俳優を選んでいるのと一緒で、その立場にも関わらず誰がミスしたなど被害者のように捉えるのは、絶対に許してはいけない。私自身広告会社で営業を担当していた経験もあって、何かの問題に対しマーケが悪い、クリエイティブが悪い、芸能事務所が悪いなどと言おうものなら、一気に信用を失います。クライアントに向き合っているアカウントエグゼクティブとして、自分で責任を負うのは当たり前のことです。例えパートナーのミスであっても。同時に東京會舘の責任という意識も必要。プランナー、会社で責任を取るからこそ、パートナー企業側も中途半端は出来なくなります。何故なら、顧客に向き合って責任を持つ立場である以上、些細な問題点も見過ごせませんし、何かあれば徹底的に改善を進めますから。」
――それが商品力の向上に繋がっていきます。
星野「ある新婦から、ドレスの圧着感が弱すぎて義理のお母さんからみっともないと言われたという報告を受けたことがあります。問題は下着で、フィッティングは衣裳と同時に試しているものの、その時は何回も着回したものを使っていました。新品ではないため、当日の圧着感とは異なり、こうした指摘を受けたわけです。そこで、同じスタイルのドレスを着る新婦には、新品の下着を付けさせ圧着感の確認を事前に必ずするようルールを作りました。パートナーも納得するミスの起こりづらいルールを作ることは大切で、かつミスが起こった時に自らの責任として原因を突き詰めていく。この積み重ねの結果作られていくオペレーションが、商品力向上となります。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、1月21日号)

