LISTEN to KEYMAN

キーマンに聞く

:連載92:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW]ブライダル法務Q&A vol.29「『サプライズ演出の依頼』をどこまで受けるか』 ~株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏~

:連載92:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW]ブライダル法務Q&A vol.29「『サプライズ演出の依頼』をどこまで受けるか』 ~株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏~

暑い日が続いておりますが読者の皆様は元気にお過ごしでしょうか。

今回は「サプライズ演出」についての課題をQ&A形式でまとめます。

Q.参列者から「新郎新婦には内緒にして」とサプライズ演出への協力を求められることがあります。過去に大きなトラブルはないのですが、これに応じることは法律的なリスクはあるのでしょうか?

A.リスクは大いにあると考えます。

会場運営事業者は、新郎新婦との間で結婚式契約を締結すると、その契約に基づいて、協議し決定された通りの演出サービスを提供するという義務を負います。

大切なのは「契約当事者は新郎新婦である」という点です。契約当事者である新郎新婦には内緒でサプライズ演出を追加することは、いわば勝手に演出内容を変更することですから後から「契約違反だ」という批判を受けるリスクが生じますし、実際にそうしたトラブルは耳にします。

Q.そうであればサプライズ演出は一律断らないといけないのでしょうか?

A.そうではありません。

契約当事者である新郎新婦から同意を得た上でサプライズ演出を追加するのは「合意の上での内容変更」ですから契約上の問題は生じません。

Q.参列者の一部からは「事前に新郎新婦の同意を得てしまったらサプライズにならない」と言われてしまいそうです。

A.同意の取り方はいくつか考えられます。

たとえば、新郎と新婦のいずれか一方から事前に同意を得るという方法です。厳密に言えば契約当事者は新郎新婦双方ですから「片方の同意で足りるのか?」という難しい論点は残りますが、少なくとも契約当事者の一方の同意を得ている事実があればサプライズ演出を実行することの正当な根拠になり得ます。

次に、予め新郎新婦に「参列者からサプライズ演出の打診があった場合はどうすればよいか」をヒアリングしておく方法も考えられます。予め「絶対に断って欲しい」または「全然問題なく実施して欲しい」などの方針が示されれば事業者は悩みませんし、「こういうサプライズはやめて欲しいが、それ以外はOK」など明確な条件が示されていれば判断もしやすくなるでしょう。

Q.参列者に「新郎新婦のいずれかの同意を得る必要がある」と伝えても、「それでは意味がない」と完全シークレットを強く求める参列者がいると、対応に苦慮します。

A.そのご要望はいくらなんでも根拠がないですね。

結婚式の主催者でもなく、会場運営事業者の契約当事者でもない参列者の意向で、結婚式の主催者であり、契約当事者である新郎新婦の同意を得ずに結婚式の内容を変更することは筋が通りません。

Q.参列者の中には「もし万が一トラブルになっても会場には迷惑をかけないと誓約するから」と完全シークレットにこだわる方も稀にいらっしゃいます。

A.契約や合意の効果は当事者にしか及びませんので、参列者が会場に対して「責任は俺が持つ」と誓約したとしても、その誓約の効果は新郎新婦には全く及びません。もしサプライズ演出が気に入らなかった新郎新婦から「参列者からどんな誓約をしているかは私たちには関係ない」「問題は、なぜ契約当事者である私たちの同意なく勝手に演出内容を変更したのか」「これは契約違反ではないのか」等と問われたら、正直なところ正論過ぎて何も言い返せないです。

Q.会場スタッフとしては参列者の熱意に応えたいときもあります。

A.それはよく分かります。実際にサプライズ演出が後から問題になる場面は限られるとは思います。

ただ、私たちが最も重視すべき対象は契約当事者である新郎新婦ですから、その新郎新婦から見て不誠実と映らない対応を軸に考えるべきです。「契約当事者は新郎新婦である」という大原則を念頭に置いて、各会場にて「サプライズ演出の申出にはどう対応するか」というルールを予め決めておくことをお勧めします。

(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、8月1日11日合併号)