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【TOPインタビュー】464の自治体をプロデュース(八芳園 取締役専務総支配人 井上義則氏)

【TOPインタビュー】464の自治体をプロデュース(八芳園 取締役専務総支配人 井上義則氏)

 2010年代、単館経営でありながら日本の結婚式を代表するトップランナーとして業界を牽引してきた八芳園(東京都港区)。時代の新たな節目を迎えるにあたり、結婚式に限らず、あらゆるライフイベント・コーポレートイベント・MICEについて、食を軸にした企画プロデュースを手掛ける「総合イベントプロデュース会社」へと進化を遂げようとしている。「今のウエディングプランナーに必要なものは『経験に基づく知識』」として、東京五輪・パラ五輪の関連プロジェクトなど、新たな事業にプランナーを参画させる井上氏の想いと、八芳園の未来に迫った。

 ――2019年は人事労務や経費精算などの事務処理業務にクラウドサービスを導入しました。 
井上「2020年以降に向けて人を中心とした企業構造を確立するための布石。間接部門を効率化することで働き方改革や生産性向上などを進め、婚礼・営業部門への還元を図ります。」 
――価格競争が激化し、新規来館組数も横ばいまたは減少傾向。業界環境は決して良いとは言えません。 
井上「7 月からパートナー企業のスタッフも含めた研修を始め、パートナー企業との関係再構築、連携強化を進めています。社内情報を共有するために導入したグループウェアをパートナー企業との連絡にも利用しているのですが、情報伝達がスピードアップした一方、直接会う機会が減り、当社のウエディングプランナーとパートナー企業の担当スタッフとの交流も少なくなってしまいました。たとえ非効率的でも対面コミュニケーションをゼロにしてはいけないと考え、研修という形で改めて設けることとしました。」 
――研修ではどんなことを学ぶのでしょうか。 
井上「知識の向上、それも単なる商品知識ではなく結婚式に関するものごとの由来やエピソードなどを身につけることを目的としています。根本的に、カップルはウエディングプランナーに対して『結婚式への知識の提供』、それも、スマートフォンで得られない情報を期待している。プランナーはこれに応える努力す。例えば料理一つを取っても、材料に何が入っているのかだけでなく、食材の生産地はどんな場所か、作り手がどれだけこだわっているのか。そういうエピソードの引き出しをたくさん持つことで、カップルの希望と結びつけてみたり色々な提案ができるはずです。今はカップルもたくさん情報を持っていますが、これに対応するためにも、やはり知識が必要になるのです。結婚式の仕事をするための基礎としての知識を身につけた上でプロデュースしなければなりません。当社の本業はどこまでいってもプロデュース業。人材によって成り立つものです。その本質を踏まえて、社内の構造改革に着手しました。」 
――知識を丸暗記するみたいになりませんか? 井上「いいえ、座学研修はあまり行いません。フィールドワーク的な要素の方が強いです。当社は、東京五輪・パラ五輪開催期間中に464の自治体が登録するホストタウン活動の集大成の場として、地域の魅力をPRするイベント『2020ホストタウン・ハウス』の主幹会員で、自治体の展示ブースの企画とフード開発に取り組んでいます。企画にあたり、各自治体に私たちが出向いて打合せするのですが、そこにプランナーなど他部門のスタッフたちも同行させています。打合せでは何をPRしたいか、あるいはPRすべきものを発掘するために丁寧にヒアリングして見出していく。そして、フォーカスしたものを魅力的に見せるためのタッチポイントを企画・演出していきます。この流れは、結婚式のプロデュースと全く同じなのです。自治体とのやり取りは、プランナーたちにも多くのヒントとなるはずです。」 
―― 結婚式もMICEも、企画・プロデュースのプロセスが共通しているのですね。 井上「もっと踏み込むと、2020年以降、当社はあらゆるイベントを企画するプロデュース企業となることを目指しています。その大きな枠組みの中に、結婚式、ライフイベント、コーポレートイベント、MICEがある。そんな企業のあり方をイメージしています。」 ――2020年ホストタウン・ハウスの話を少し伺いたいのですが、登録自治体が464ということは、県もあれば市区町村もある、ということですよね。 
井上「その通り。予算規模も売りになるものも全てバラバラです。あちこちで予算が無い・PRするものがないと言われ、中には計上していた予算を台風被害の復旧費用に急遽充てることになったケースもありました。でも、実はこれらの課題の多くは、特定の課だけでプロジェクトを進めるのではなく、他部署と連携することで解決したりします。縦割りに管理されている組織に私たちが横断的に関わることで、新しい可能性が生まれるのです。」 
井上「岩手県山田町は前東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当大臣の鈴木俊一さんゆかりの地で、江戸時代にオランダ船が停泊したことに由来する『オランダ島』という無人島があります。東日本大震災の折にオランダが支援活動を行ったことから、今回はオランダチームを誘致して復興のお礼がしたい、と準備を進めています。島の湾内ではホタテの養殖が盛んです。打合せにあたって当社のシェフやサービススタッフを連れて行き、水揚げを手伝ったり、獲れたてのホタテを食べさせてもらったりしました。地域の皆さんと交流する機会も多く、東京に戻ってきたスタッフは周りに『とても良いところだった』『あの人にまた会いたい』などと話しています。これも立派な観光のあり方ですし、何より重要なのは、スタッフ自身が山田町のホタテの魅力を語れるようになったこと。インターネットでは得られない、自らが経験したことを語る。これが『知識』の神髄です。プランナーたちにも、こういう経験を通じてクリエイティブな視点や、知識を組み合わせ・編集していく術を磨いてほしいのです。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、新春特大号)