LISTEN to KEYMAN
キーマンに聞く

連載21《自社運営施設では成約率60% 中小会場の成約率UP》当日の過ごし方を体験価値として提供 【KAKEHASHI 代表取締役寺田 英史氏】
最近の新規接客の傾向として、即決で決めづらくなっているという悩みをよく耳にします。「どうしても持ち帰って検討したい」、「1 件目なので決められない」という断り文句は以前と変わらないものの、その裏側には圧倒的にこの会場が良いというところまで至っていないからだと考えられます。つまりベネフィットを伝えきれずに、どこかでスペック的な話中心になってしまっているのではないかと。
ブライダル産業フェアの講演でも話した内容として、当社の運営している会場ではベネフィットを売ることを徹底しています。ではベネフィットとは何かと言うと、【体験】です。当日に新郎新婦、ゲストはこんな体験ができるところを売るという考え方であり、そうしたセールスをしていかなければ、「この会場で結婚式をしたい」というところにまで到達しないため即決も出来ないと分析しています。
当社の会場は森の中という、ロケーションの特殊性があります。それを活かして体験価値を作っていると同時に、1日1組貸切、対応するためのタイムテーブル、フルオーダーメニューといったオペレーションを作って、価値に変えています。その点では、例えば料理に体験価値を生み出すことはできる会場もあるでしょうし、また自然光が入るガーデンに隣接したバンケットを持っていれば、マルシェのようなビュッフェを商品化することで、それは体験価値になっていきます。
基本的にはセールスは最終段階で、その前に自会場の強みを作っていかなければなりません。当社の会場の強みはオペレーション軸、商品・サービス軸の二つがあり、オペレーションは1日1組完全貸切。そこで提供する商品・サービスはオーダーメイドをうたっていて、それが料理のフルオーダーメニューに繋がっています。またウェルカムパーティーとガーデンパーティーを頭と最後にし、一日の過ごし方を体験価値としても提供しています。
実際に多くの会場では、プランナーが一生懸命セールスをしようとしても、売るものが乏しいことで結局ハードスペックの説明だけに終始してしまっています。当日に新郎新婦・ゲストは何を体験できるかというソフトの部分を作らないければ、スペック勝負となり、差別化も限界があります。
この体験価値を作っていく上では、結婚式の常識に対する固定観念に縛られていると難しい面も出てきます。例えば、ウェルカムパーティー。披露宴のおもてなしの前にドリンク、フードを提供するわけですが、披露宴の前にそこまで出したら肝心の料理への興味も薄れるのではという疑問の声もありました。婚礼料理前に、お腹を満たすべきではないという否定的な意見も。しかし、そうした考えの会場が多いからこそ、逆に差別化できる領域だと考えられ、つまり常識を少しずつ変えていくことも中小会場にとっては特に必要だと思います。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、7月1日号)