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キーマンに聞く

没入感のあるVR体験提案【八芳園 BX推進事業部事業部長 治部隆宏氏】
2月から大規模改修工事に入り、10月1日にリニューアルオープンした八芳園(東京都港区)。スタートダッシュは好調で、改装期間中の受注を支えたのが、【EXPERIENCE SHOW CASE】と題したVRによる結婚式の疑似体験だ。VR導入前と比較し、成約率は5ポイントアップ。今後はこの成功ノウハウを、同業他社へも積極的に展開していく。BX推進事業部事業部長・治部隆宏氏に、ツールのこだわり、根底にあるおもてなし改革への想いなどを聞いた。
結婚式のシーンを“体験”
――もともと『DX推進室』からスタートし、昨年秋に『BX(ビジネストランスフォーメーション)推進事業部』となりました。部署名変更の背景は。
治部「おもてなしをアップデートするだけでなく、ビジネス自体もアップデートするという意味で名称をチェンジ。事業部単位に規模を拡大した施策として動いています。現在は『HOSPITALITY ENSEMBLE by HAPPO-EN』と題し、おもてなしDXで顧客満足度を変革させるプロジェクトを推進しています。」
――展開する3 つのソリューションの内の1つが、VRを使った結婚式の疑似体験『EXPERIENCE SHOW CASE』です。
治部「本サービスの大きな枠組みとしては、カップルがVRゴーグルを装着し、没入感ある360度の立体映像を、リアルな内覧と同様に“体験”できるもの。八芳園は今年2 月から改装のため閉館しており、10月1 日に再オープンしました。新規見学は随時受け入れていたものの、会場を直接見られない状況でしたので、その際に活用したのがVRです。ゴーグルはApple社の『Apple Vision Pro』を採用。10万円程度で購入できる安価なゴーグルも市場には多くありますが、映像のスムーズさ、“VR酔い”しにくい点などから、Appleのものを採用しました。数百万円の結婚式を提案するのにふさわしいクオリティを重視した結果、必然的に高性能機器を取り入れる判断となったわけです。導入にあたり、ツールをきちんと使用できるか、案内はスムーズかをテストをした上で、実際の接客現場で活用していきました。」
――成約アップを目指し、こだわったポイントの1 つはミラーリングシステムです。
治部「映像を見ている際、カップルの視線は今どこにあるのかを、リンクしているiPadで視線の位置を確認できます。例えば照明部分を長く見ているようであれば、『こちらの照明は~』などと興味・関心の高いであろう部分の説明にスムーズに入ることも可能。ゴーグル自体に慣れていないカップルも多いですから、視線がなかなか動かない場合もiPadでチェックし、『こちらからの角度もぜひ見てみてください』と案内できます。会場自体の映像はもちろんのこと、様々な演出シーンも撮影しました。例えば料理パフォーマンス。シェフがローストビーフを切り分け、実際にテーブルに運ばれてくるシーンも入れています。それ以外に臨場感ある挙式の様子など、ゲスト目線で参列しているような気分を味わえます。」――視覚はもちろんのこと、聴覚もポイントだそうですね。治部「イヤホンは骨伝導式を採用。音がクリアに聞こえるのに加えて、物理的に耳を塞がないという点はカギです。仮にヘッドホンスタイルにしてしまうと、新郎・新婦2 人の会話が遮られてしまいますから。挙式の映像を見ながら、そのシーンのリアルな音、声を聴きつつ、『この演出素敵だね』、『これもいいんじゃない?』など、リアルタイムで出てくる感情をベースに意見を交わせます。言わずもがな、能となるわけです。」
季節や時間帯の確認も
――リニューアル工事も終わり、10月1 日からは実際に会場見学もできるようになりましたが、VRによる案内は今後も活用していくそうですね。
治部「VRを導入した改装期間中の成約率は、それ以前と比較し5 ポイントアップ。今後は実際の会場見学とあわせて、併用していくスタイルを取っていきます。リニューアル後の打合せスペースは『インスピレーションサロン』としており、様々な体験から付加価値を提供することを目指しています。VRに関しても、体験価値向上の位置付けです。直接会場を見てもらうのはもちろんのこと、例えば、庭園を望めるバンケットであれば、披露宴を予定している季節の庭はどんなイメージになるのかを、VRでしっかり確認してもらう。午前なのか午後なのか、時間によっては自然光の入り具合も大きく異なりますから、その確認にも活用できます。重要なのは、カップルの不安解消に繋げていくこと。実際の施行シーズン、挙式・披露宴の時間は必ずしも内覧のタイミングと同じとは限りませんから、VRを通じた没入体験でしっかりと納得してもらうことは、カップル、プランナー双方にとってベストだと感じます。」
――培ってきたVRのノウハウは今後、外販していくそうですね。
治部「成約率5 ポイントアップという結果も出ましたから、この成功体験は同業他社にも積極的にシェアし、ブライダル業界全体を盛り上げていければと考えています。ゴーグルは購入してもらう流れで、撮影・導入支援などを一貫してワンストップサービスで対応していきます。当社のように自社会場の内覧に使うのはもちろんのこと、プロデュース会社なども相性はいいかと。また、昨今は1つの拠点で複数の自社会場を案内するケースも出始めていますから、そうした企業にもぜひ活用してもらいたいですね。当施設の大規模リニューアルを通じて改めて強く感じるのは、新規来館に訪れるカップルの目的は『会場を見たい』ということ。とはいえ予約状況、繁忙期など様々な都合もあるでしょうから、納得感のある体験をVRで提供し、しっかりと価値に変えていく。多くの企業とタッグを組んで、業界の活性化に貢献できれば嬉しいです。」
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、10月21日号)

