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  • 22.03.22

:連載63:今を知り、明日を勝ち抜く[ブライダル法務NOW]第63回『ブライダル法務Q&A vol.3「名古屋地裁判決の影響』~株式会社ブライト 行政書士事務所ブライト 代表 夏目哲宏氏~

新型コロナウイルスの感染拡大を理由に2019年9 月に締結した結婚式契約を翌年4 月に解約した新郎新婦の「解約料支払い義務」の有無を巡り争われた裁判で、去る2 月25日に名古屋地裁が出した、感染拡大下では「開催は現実的に不可能だった」などとして支払い義務を否定する内容の判決は、マスコミに大きく報道され、業界内でも波紋が広がっています。今回のコラムはこの訴訟を巡るQ&Aをお届けします。(監修/BRIGHT 増渕勇一郎弁護士)

Q.名古屋地裁で「解約料の支払い義務」が否定されたことで、今後感染状況を理由に解約する新郎新婦に対して解約料の請求はできなくなるのでしょうか?
 A.全くそんなことはありません。他の裁判でも同じことは言えますが、判決はあくまで対象となった事案に対して出されたものであって、他の類似案件における結論に直接影響を与えるものではありません。また、本件訴訟についても、今後控訴されれば、結論が変わる可能性もあります。
Q.過去に感染拡大を理由に解約した顧客から「名古屋地裁で支払い義務が認められなかったのだから、私たちが支払った解約料を返せ」という要求をされた場合には、事業者は返金義務を負うのでしょうか?
 A.先ほどと同じ答えですが、今回の判決は具体的な個別事案に対して出されたものですので、当事者以外に何らかの義務を生じさせるものではありません。すでに支払い済みの解約料について、今回の判決を理由に返金義務が生じるというようなことはありません。
Q.ただ、もし新郎新婦から「名古屋地裁で法的な判断が示された以上、新型コロナウイルスへの不安を理由とした解約であっても解約料が生じるという考え方自体が間違っているのではないか」と指摘された場合に、どのように回答すればよいでしょうか。
 A.法的な考え方というのは様々な見解があり得て、もともとこのテーマについても「支払い義務を免れるケースもあり得る」とする日弁連の消費者被害対策委員会等の見解と、「原則として免れない」とする法務省や婚礼業界団体等の見解とに分かれていました。また、司法の場においても、名古屋地裁とは逆に「新型コロナウイルスの感染拡大局面にあっても結婚式の開催が『履行不能』とまではいえない」として、解約した新郎新婦は解約料の支払い義務を免れないと判断した裁判も存在しています。したがって事業者としては「自分たちは法的な論争に立ち入るつもりはない」と断った上で、「自分たちはこう考える」と自らの見解を主張して差し支えありません。
(詳細はブライダル産業新聞紙面にて、3月11日号)